〜 入寮 〜-3
指名をうけたふくよかな少女が、唇をきっと結んでやってきた。 全体に肉づきがよく、特に胸がたゆんでいて、乳首も私好みの薄桃色だ。
「に、29番です。 よろしくお願いします」
「よくできました♪」
パァン!
「ひぐっ」
少し力を籠めただけというのに、頬を張られて固まってしまった。 これでは往復ビンタの往路はよくても復路の体をなさない。
「こらこら。 右の頬をうたれたら、左の頬はどうするの?」
「つっ……は、ハイ!」
ビクッとして正面を向く。
「顔を前にしなきゃビンタして貰えないでしょう? 今のはノーカウント、もう一度はじめからです。 番号をいいなさい」
「ハイ! 29番です、よろしくお願いします!」
「顔は前よ♪」
パァン!
「ひっ……くっ!」
「つぎは反対側」
ビシッ。
「つっ」
「その調子」
パァン、ビシッ、パァン、ビシッ、パァン、ビシッ、パァン……ビシィッ。
「あっ、ありがとうございましたぁ!」
血色よく熱がこもった頬っぺたで、うっすら涙をにじませながら。 29番は胸を揺らして頭を下げた。 肌触りも初々しくて実にいい。
「宜しい。 列に戻りなさい。 はい次、どんどんおいで」
手首のウォームアップは終わり。 ここから本気でぶってみよう。
30人以上いるのだから、一々手加減してられないし、スピード重視でいくつもりだ。
「失礼します! 22番です、よろしくお願いしま――ぶっ」
パァン、ビシッ、パァン、ビシッ――
「ありがとうございました!」
「はいはい、次々」
挨拶が終わるまで待っていられない。 最初の張りで舌を噛んだような手ごたえがあったが、まあ問題ないだろう。 目の前にいる22番は、さっきの少女ほどスタイルが良くないので、個人的には興味がない。 さっさと終わらせて次にいこう。
「2番です! よろしくお願いします!」
「う〜ん、これはちょっと……」
並ぶ少女達の肌は、十代らしい瑞々しさを湛えてる。 しかし、中には緊張のせいか、鳥肌がたってパサつく質が悪い皮膚もある。
「……ぺっ。 ぺっ、ぺっ」
「っ!? え……あうっ」
「それじゃあ、いきましょうか」
パァン、ビシッ、パァン、ビシッ――
そういう時は少女の顔面に唾を2、3回吐けば、気持ちいい音色になる。 至近距離で唾を顔面に喰らい、めんくらった少女たちの顔は、音色だけでなく表情も味があって面白い。 鼻孔に命中した唾が、垂れてきて凄いことになったり、唇にかかった唾が糸を引いたりと、頬以外にかかった唾も無駄にはならない。
結局全員指導するのに10分近くかかった。 最後の5人は、こちらも手が痛くなってきたので、ついイライラして全力でひっぱたいてしまった。 御蔭で自分の手のひらも随分熱をもっている。肌質の点でいえば、今年の新入生のうち唾で湿らせたのは4人。 総じてもっちりした肌の学年という印象だ。 きめ細かな肌が好みではあるが、吸い付くような肌も嫌いではない。
……。
そうこうするうちに、寮の先輩たるBグループの差配のもと、新入生の荷物が玄関脇に並ぶ。 合宿所から直接寮に配送された荷物は、ナップサックだったり、トランクケースだったり、鞄の形からして様々だ。ジッパーにお守りやストラップがついていたり、飾り紐にキーホルダーがぶらさがっていたりと、眺めるだけでシミジミする。 合宿に参加するまでは、学園の日々にあれこれ夢をもっていたのだろう。 紐のような登下校服に、全裸で首輪以外許されない授業など、思いもよらなかったのだろう。
鞄の中にも、例えば写真や小物といった、大切な思い出が詰まっているに違いない。 ビンタで頬を赤くした少女たちは、みな玄関脇の荷物をみている。 緊張感は消せないものの、心なしか嬉しそうだ。 どこに自分の荷物があるか、暗がりで分からないまでも、どこかにあると思うだけで期待が膨らむというものだ。
時計は7時12分。 繰り返すが、寮の門限は7時である。