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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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たどり着いた場所-3

 ベッドに横になると、神村は私の全身にくまなくキスをした。額に、うなじに、肩に……。

「シヅ子、君の何もかもが好きだ」

 肩胛骨に、背筋に、脇腹に、

「ああ、愛しい、君が、たまらなく愛しい……」

 乳房に、へそに、内ももに……

 私は加速度的に身体の温度が上がっていくのを感じていた。

 そして神村は私と脚を絡ませながら最後に唇と舌を慈しんだ。私もんんっと呻きながら何度も角度を変えて口を重ね直し、唇を舐め、舌を絡み合わせた。

 私は口を離して彼の肩を押しやり、仰向けにすると、その身体に覆い被さり、間近でその澄んだ瞳を見つめた。

「照彦さん」
 私が呼ぶと、彼もすぐに応えた。「シヅ子」

 二人は再び共に目を閉じて顔を近づけた。
 私は神村の上唇を咬んだ、神村は舌を伸ばして私の顎を舐め始めた。
 はあっと大きな吐息と共に私は口を開いて神村のそれを覆った。そして唾液を滴らせながら舌を彼の唇に割り込ませた。神村はその舌を吸い込み、自分の舌を絡ませ、何度も擦り合わせた。下になっている神村の頬をとろとろと二人の唾液が伝い落ちた。

 そうやって私が上になり身体を重ね合うのは二人にとって初めてのことだった。

 私は出し抜けに神村から身体を離し、ベッドを降りた。
「え? シヅ子ちゃん?」
 ベッドに取り残された神村は身体を起こし、上気したままの顔を不安そうに曇らせて私の姿を見やった。
 私はソファの肘掛けに無造作に引っかけられていた神村のいつものネクタイを手に取り、ベッドに戻った。
 私は無言のまま神村の身体を乱暴に押し倒し、再びその身体に馬乗りになった。
「シヅ子ちゃん?」

 私は唇を噛みしめ、泣きそうな顔で、神村の顔を見つめた。
 彼の身体にのしかかった私は、手に持ったネクタイでその両手の手首を固く縛り上げた。そしてその腕を彼自身の頭上に持ち上げた。
「シ、シヅ子……」
「これは罰。貴男への」
「え? 罰?」
 私は口元に冷ややかな笑みを浮かべると、神村の身体に四つん這いで覆い被さったまま、すでに豊かに潤った自分の秘部に右手の指を差し入れ、抜き差しを始めた。くちゅくちゅと淫猥な水音をわざとたてながら、身を乗り出し、自分の乳房で神村の口を塞いだ。彼は驚いたように目を見開き、喉元で苦しげなうなり声を上げた。
 しばらくそうして彼の呼吸の自由を奪った後、私は上になったまま、いきり立って脈動し始めていたその持ち物に爪を立てて握った。神村はんぐっ、と呻き身体を仰け反らせた。神村のそれはすでに熱く、先から透明な液が漏れ出していた。
 今度は口で神村の口を塞いだまま、私は熱く火照った彼のものを持った手を上下に動かした。神村はその度に苦しそうな顔で呻いた。その言葉にならない声とぬるぬるとした手の感触が私自身の身体もどんどん熱くしていった。

 それから私は身体を離し、手で強く握りしめていた彼のものを躊躇わずそのまま口に咥え込んだ。

「シヅ子っ!」神村は突然身体を起こし私に向かって大声を出した。
 それは恫喝に近い叫び声だった。私は反射的に口を離し、身体を硬直させて、怯えたように目を見開いた。

「やめろっ! そんなことするんじゃない!」

 私はその時、幼い頃粗相をして、父にひどく叱られたことを思い出していた。
 荒い息を繰り返しながら神村は結びつけられた両手首を自分の太ももに置いて、真っ赤な顔をしていた。それは性的に興奮していたというより、怒りに身を震わせていたという感じの表情だった。
「僕は君にはそんなことをしてほしいなんて思ってない!」
「……君には?」私は神村の顔を上目遣いで睨み付けた。
「君らしくないことを……しないでくれ」
 神村は声のトーンを少し落として言った後、唇を噛みしめた。

「わかりました。もうしません」私は無愛想な口調で言った。
 私は再び彼の身体を仰向けにすると、腕をゆっくりと持ち上げ、額同士をくっつけ合って、その顔を覗き込んだ。
 胸の中の赤い炎がまたゆらゆらと妖しく揺らめき始めた。
「じゃあ、誰からならあんなことされたいの? 照彦さん」
「え?」
「わたしじゃない誰かからしてもらいたい、なんて思ってるんじゃない?」
 いきなり神村は結びつけられた両腕を枕から持ち上げた。そして私の頭をくぐらせ、背中に回した。彼の腕は手首を結び合わせられているにも関わらず、私の背中をいつもと同じ力でぎゅっと抱いた。
 あっ、と小さく叫んで私は慌てた。
「さっきから何を言ってる?」神村はまた声を荒げた。「今日の君は変だ!」
 私と神村の身体は、簡単には離れなくなってしまった。自分が拘束した彼の腕が、私自身をも拘束したのだ。


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