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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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重なり続ける罪-5

 翌週の月曜日、出勤してすぐ、私は更衣室で活動着のジャージ姿に着替えていた。
 そこにスタッフの木村が入ってきた。
「あら、浅倉さん、おはよう」
「おはようございます、先輩」
「今日は寒いわね。何だか本格的に冬が来たみたい。ま、12月だしね。当たり前か」
 木村は私の背後のロッカーを開けて、着ていたコートを脱ぎ始めた。

 私がジャージに足を通し終わった時、木村が背を向けたまま話しかけてきた。
「そう言えば浅倉さん、一昨日の土曜日の夜、寮の部屋にいなかったわね」
「え?」
「どこかに出かけてたの?」
「はい。友だちと飲みに」
「そう。気晴らしってとこね」
 木村は続けた。
「あなた土曜日の晩はいつも留守にしているけど、やっぱりその友だちと出かけてるの?」

 私はびくんと肩を震わせた。

「何度か差し入れに行ったのよ。一人じゃ寂しいだろうからって」
「そ、そうですか」私はジャージの上着のジッパーをゆっくりと上げた。
「寮長さんに訊いたら、だいたいいつも土曜日は外泊だ、って仰ってたけど」
「……」
「大阪の彼に会いに行ってる、とか……。それはないか。遠すぎるわよね」
 ふふっと笑って木村は振り向いた。
 私は身体を横に向けてうつむき、彼女と目を合わせることができないでいた。
「その友だちと夜通し話してる、ってことなのかな? 日頃の鬱憤とか」

 木村は更衣室の入り口付近をちらちらと覗った後、私の腕を取って奥の窓際まで引っ張っていった。
「え? せ、先輩?」
 私の腕をぎゅっと掴んで身体にその身を密着させるようにしていた木村は、その胸の膨らみを私の肩に押しつけながら私に顔を寄せ、耳元で囁くように言った。「私ね、一昨日は神村主任と一緒だったの」

 私は思わず顔を上げた。

「神村さん、優しくて素敵よね」
「あ、あの……」
「誰にも言わないでね。私、前から狙ってたの、彼。私の方がこの職場は長いけど、主任がここに来た時、一目見てストライク。だけどあの人既婚でしょ、だから諦めかけてたの」木村は眉を下げて小さなため息をついた。しかしすぐに目を輝かせ、声を高くして言った。「でもね、あの人が今一人で暮らしてる、って聞いて、今がチャンス、って思ったの。でね、ちょっと強引だけど押しかけちゃったのよ、一昨日」
「お、押しかけた?」

 私の心臓はどくんどくんと速打ちを始めた。

 私はちらりとその嬉しそうに話す先輩木村の顔を見た。彼女は自分の鼻をしきりに擦りながら恥ずかしげに頬を赤くしていた。
「神村さんすんなり私を部屋に入れてくれて……」木村は言葉を切って数回瞬きをした後、蚊の鳴くようなかすかな声で続けた。「キスしてもらっちゃった……」

 私の胸の中で何かが破裂するような音がした。そしてその瞬間からゆらゆらと赤い炎が身体の中に燃え広がり始めた。

「もう急展開で、夢みたいだったわ。今は思いっきり不倫だけど、いいわよね。だってあの人今奥さんとは別居中だし。このまま私とつき合い続ければ離婚してくれるだろうし」
 木村は恥ずかしそうに両手を頬に当てて身を縮めた。
 「お泊まりもしたの。とっても素敵な夜だった」木村は入り口を気にしながらも、興奮したように続けた。「彼ってすっごく大胆なの。いろんなことしてくれて感じさせてくれたのよ。私もお返しについ大胆になっちゃって、彼にいろいろしてあげた。彼もとっても喜んでた」
 その夜を思い出すように、自分の大きな胸を両手で押さえて夢みるように目を閉じた彼女は、すぐに真顔になり、私の顔をじっと見ながら低い声で言った。「誰にも言わないでね。浅倉さんにしか話さないんだから」

 私は木村のバストに目を落としながら同じように低い声で言った。「……わかりました。誰にも……言いません。ご心配なく」

「ありがとう」木村はそう言った後、いつもの張りのある明るい声に戻った。「今日も元気にがんばりましょうね」


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