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忘れ得ぬ夢〜浅葱色の恋物語〜
【女性向け 官能小説】

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たどり着いた場所-1

5.たどり着いた場所

 いつものレストランを出た所で、神村は思わず手のひらを上に向け、空を見上げた。「降り出したね……」
「天気予報が当たりましたね」私は神村の顔を見上げた。
 神村は近づいたタクシーに手を上げた。その車はすぐに二人の前で停まった。
「暁橋に」神村はリアシートから身を乗り出すようにして、低い声で運転手に伝えた。
 私はコートの襟元に手をやり、中に着ていたブラウスの一番上のボタンを外した。

 『暁橋(あかつきばし)』というのは、この街の中心を流れる大きな川に掛かる橋の一つだったが、そのたもとには数件のラブホテルが建ち並び、ネオンや赤青のランプが夜になると派手に輝いている界隈だった。そしてその『暁橋』という言葉は、そのホテル街に車を向けてくれ、という一種のスラングになっていたのだった。

 白髪混じりの運転手は黙ったままハンドルを握り直して右ウィンカーをつけた。雨粒がフロントガラスの視界を曇らせ、ワイパーがそこを何度も繰り返し横切るのを私はぼんやりと見ながら、隣に座った神村の手を無意識のうちにぎゅっと握りしめていた。


「照彦さん」ホテルの部屋に先に足を踏み入れた私は、ベッドの横に立って言った。「あなたにプレゼントがあるんです」
 靴を脱いだ神村は、狭い入り口のスペースに屈んで私のヒールを揃え直し、自分の大きな革靴をその隣に寄り添わせるように並べて置いた後、立ち上がって振り向いた。「プレゼント?」
 私は紙袋を持ち上げた。
「へえ、嬉しいな。何?」神村はそれを受け取りながら袋の中を覗いた。そして入っていた細長い箱を取り出した。
「ネクタイ。いつも同じの、してらっしゃるから」
 神村は照れくさそうに笑った。「そ、そうか。どうもありがとう」
 私はコートを脱いでハンガーに掛け、壁のフックに下げた。そして神村に微笑みを向けた。「今日はいっしょにバスルームに」
 その箱を手に持ったまま、神村は意外そうな顔をした。「え? あ、ああ、いいよ」

 私はすぐに自分の着ていた服に手を掛けた。アーガイル模様のセーターを首から抜き、短めのタイトスカートを、穿いていた黒いストッキングを、そして薄いピンク色のショーツまで一気に脱ぎ去った。

「照彦さん」私は彼の名を呼び、身体を振り返らせた。神村はいつも私とホテルに入った時そうするように、壁に向かってグレーのスーツの上着を脱いでいるところだった。彼のコートは私のそれと重なるように壁に下げられていた、
 私は薄いブラウスだけの姿で神村を見上げ、小さな声で言った。
「脱がせて……」
 神村は、えっ? という顔をして私に近づいた。
「ブラはしてないの? って、も、もう他には何も着てないじゃない」
 私はこくんと頷いた。
 神村は呼吸を無理して落ち着かせながら言った。「浅葱色のブラウス……」
 そして彼はほどきかけたいつもの柄のネクタイをそのままにして、私のブラウスのボタンをゆっくりと外していった。
――そう。浅倉シヅ子と神村照彦の初めての夜と同じように。

 ボタンを全て外し終わった神村は、私の胸をはだけさせ、両肩を大きな手で掴んだまま、息を荒くして待ちきれないように唇を求めた。
 すぐに私は少し身を引いて口を離し、自らブラウスを脱ぎ去った。
 一糸纏わぬ姿で私は、背伸びをして少し不安げな顔をしていた神村に抱きつき、今度は自分からその唇を求めた。彼も私の背中に腕を回し、安心したようにいつものようにゆっくりと、時間を掛けてこの唇を愛した。彼に抱きしめられ、緩められたネクタイが私の乳首に何度も擦れて、その度に私は思わず眉を寄せてんんっ、と呻いた。私は神村を抱きしめた腕に力を込め、自分の乳房を彼の逞しい胸に強く押し付けながら舌同士を乱暴に絡み合わせた。


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