こ-1
「何?嫉妬っ・・・?」
「嫉妬だろ?」
そう言うと前髪をかきあげて、メガネの位置を直して
こっちに歩いて来る。
「止めてよ。こないでよ」
「病人相手にずいぶんだな」
そうだ。篠塚さん風邪・・・
「病人が女の子連れ込んでるじゃない」
「だから。俺の話聞いてた?ハンコを今日中に押さないと決算が終わらないんだって」
「篠塚さんバカ?あの子がそれだけの理由で来てると思ってるの?」
その言葉を聞くと、歩くのを辞めて
じっとわたしを見つめる。
「あの子が何をたくらんでいるのか知ってるよ」
「ほらっ!」
そして困ったように笑った。
「でも、俺がその気にならないんだから何もないよ。今後一切ね」
「・・・・」
「夢。何を慌ててるの?
何を怖がってるの?俺は夢だけが好きだよ。
俺に本気じゃないのは夢の方だろ?」
「・・・・」
本気じゃないのは・・・私の方?
「違う。違うの」
「何が違うんだよ。
俺は夢に電話するなと言われたから電話してない。
まぁ、それ以前に昨日から体調が悪くて携帯の充電もしてないから
電源が切れてるだろうけど」