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「あたし……」
【その他 官能小説】

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(3)-1

 瀬野が帰ったのは7時過ぎ、真奈美がいるのかいないのか、気になっていつもより早く退社した。

 今朝の様子は明らかに前日とちがっていた。口数も少なく、屈託のない明るさは影をひそめていた。美菜も感じたようで、
「真奈ちゃん、元気ないね」
顔を覗き込むようにして声をかけた。
「ちょっと疲れたかな。久しぶりにこっち来たから」
瀬野に視線が向けられることはなかった。

(まずかったかな……)
もし昨夜の行為を美菜に告げたりしたら……。
(厄介なことになる……)
見たところ怒った様子はなさそうだが、何か考えている風にも見える。
 気になりながら出かけたのだった。

 キッチンで料理を作る真奈美の姿を見て瀬野はほっとした。
(嫌なら出ていっているだろう……)
少なくとも美菜がいないこの時間、部屋にいることは避けるのではないか。なぜなら、さらに露骨な行為を受けるかもしれないからだ。
(二人きりになるのだ……)
その予測はあっただろう。……それを承知だということになる。
そう考えたらむらむらと拡がってくる性欲に熱くなった。
(確かめてみよう)
どれほどの抵抗をみせるか。それによって先に進めるか、手を引くか……。


「おかえりなさい」
明るい声だ。振り返った笑顔も今朝の翳りはない。
「いいにおいだな」
「瀬野さん、天ぷらが好物だって聞いたから」
「へえ、それは嬉しいな。天ぷらって簡単なようで難しいんだよね。べちゃっとしちゃって。それに汚れるし。美菜はあまりやらないよ」
「味は保証しませんよ」
揚げたエビに触るとかりっとしている。
「いいね。べっとりしてない」
「少し片栗粉入れるんです。それに衣に出汁を入れると香ばしい」
「それでいい香りがするんだ」
「もうすぐ終わるから」
細い脚にジーパンがよく似合う。痩せていても引き締まった尻と腰の膨らみはそそる女の美形である。
(いい尻だ……)
肉感的な美菜にはない、ひっそりと佇む色気を感じた。ぐつぐつと欲情が煮えてきた。

 揚げ終えたのを見計らってキッチンに入っていった。
「何か手伝うこと、ないかな」
「ありがと。あとは食べるだけ。座ってていいよ。美菜ちゃんは帰ってきて食べるから別にしておく」
「飲んできたら、食べないかもしれない」
「じゃあ、二人分で、明日にとっとくか」
瀬野は立ち動く真奈美の後ろに近付いた。
「ビール冷えてるよ」
真奈美が言った時には瀬野の手は後ろから彼女の胸を包んでいた。ノーブラの膨らみをやさしく、しかし、しっかりと掴んだ。

 真奈美は動かない。呼吸はやや大きく、まるで気持ちを落ち着かせるかのように肩だけがゆっくり上下していた。
 頂きの蕾を指先で触れるとぴくっと反応して体が固まった。

「こういうの、よしましょうよ」
「きれいだ」
項に唇をつけると身をよじって振り向こうとしたが、瀬野は抱えた腕に力をこめて耳に口をつけて囁いた。
「あ……」
一瞬、膝を崩しかけた真奈美がさらに体をひねるのに合わせて前に向かせ、引きつけてキスした。
「うう……」
顔を背けはしなかった。舌を入れても歯はとじたままである。歯ぐきをなぞるとようやく瀬野の胸を押して抗った。

「もういいでしょ」
「燃えてきてとまらない」
「そんなの知らないよ」
「いいスタイルだし……」
「体は女でも気持ちはちがうんだって」
「ちがってもいいから体を見てみたい」
瀬野の手は真奈美の背中に回って引き寄せた。真奈美は顔をわずかに後ろに反らせたものの手をふりほどくことはしなかった。

「美菜ちゃんを裏切るの?」
「裏切らないよ」
「だって、こんなことして」
「こんなことって、男なんだろ?」
「ずるいよ」
「タイプなんだ」
「ずいぶん軽い言い方だね。そうやって遊んでるんだ。美菜ちゃん可哀想」
「そんなことしたことない。初めてなんだ。こんなに惹きつけられた子は」
瀬野は真剣な眼差しを射るように向けて抱き寄せた。
 近づけた唇を避けるように横を向いた真奈美の唇を追って押しつけた。
いくぶん開いた歯の隙間に舌を差すと真奈美の熱い舌先が触れた。

 キスは長く続いた。真奈美の腕が瀬野に絡むことはなかったが、逃げることはしなかった。
 背をさすりながら、シャツの中に一方の手を入れる。じかに肌に触れ、その手を脇から乳房に移した。包んで、揉んだ。
 唇を外して首筋に顔を埋める。
「そんなことしても感じないよ」
真奈美は抑揚のない言い方で言ったが、
(うそだ……)
微妙な体の強張りが伝わってくる。
 勃起した股間を押しつけた。
「こんなAカップで勃っちゃたの?美菜ちゃんのが大きくていいでしょうに」
瀬野は左右の乳房を交互に揉み、耳の周辺に唇を這わせ続けた。

「たまには変ったのがいいってこと?」
真奈美は喋り続ける。
「溜まってるの?ここにいたらセックスできないもんね。今夜どっか泊ってもいいよ」
乳首を軽くつまんでコリコリしているうちに真奈美の呼吸が忙しなくなってきたのがわかった。
(感じている……)
 瀬野は両脇に手を差し込むと真奈美を持ち上げた。
「あ、なに……」
そのまま隣室に連れて折り重なって、すばやく胸をはだけて真奈美の腕を押さえた。

 見つめ合った目は睨むような光を持っていたが敵意は感じられない。
「ここまでにして……」
昂奮はしていたが奪うつもりはなかった。瀬野は頷いて乳房を眺めた。
 小さな円錐形の胸は初々しいほどに可憐で美しかった。
「きれいだ……ほんとに、きれいだ……」
思わず溜息とともに呟き、口をつけた。
「いやだよ……そんなの……」
細い首が伸び上がって、真奈美の力が抜けていくのがわかった。 

 




 




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