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「あたし……」
【その他 官能小説】

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(2)-2

 瀬野がシャワーから出ると、美菜と真奈美のはしゃいだ声が聞こえた。
「枕、2つしかないのよ」
「いいよ。座布団で」
布団を敷いているところのようだ。

 並んで敷かれた布団を見て、ふと考えた。瀬野と美菜が1つの布団に寝たらどうか。そうすれば真奈美にゆったり寝てもらえる。窮屈だが、数日のことだし、くっついて寝るのは美菜だっていやじゃないだろう。そっとまさぐり合って楽しむこともできる。
 そこまで考えて、
(それを気にしたのかもしれない)
真奈美の妄想を意識したのかもしれない。……

「真奈ちゃんはここ」
「はい。お邪魔してすいませんね」
2人の愛の巣に割り込んで……という意味のようだ。

真奈美は布団の端に寝転んでタオルケットをかけた。
「ちょっと飲み過ぎたかな」
「先に寝ていいわよ」
「うん。眠くなったら寝ちゃう。瀬野さん、悪しからず」
似つかわしくない言葉遣いに美菜と瀬野は顔を見合わせて笑った。

 瀬野の心情がむらむらとざわめきだしたのは美菜が浴室に入って間もなくだった。
隣室の真奈美は足をこちらに向けている。タオルケットは腹掛けなのでトランクスしか穿いていない脚は太ももまで剥き出しで、動きによっては付け根まで見えそうである。
(美菜は髪を洗う……)
いつも時間がかかる。
 行動に結びついたのはそれだけではない。真奈美は自分を男だと言っているという。
(それなら、かまわない……)
強引にこじつけ、大胆に真奈美の横に寄り添った。

「もう飲まないの?」
真奈美は微笑んで頷いた。眠りかけてはいなかったようだ。
「けっこう飲みましたよ」
薄い唇から舌が覗き、その淡い紅色は秘肉のように見えた。
 瀬野は無言で唇を重ねた。

 真奈美は身動きをしない。歯は閉じられ舌に触れることはできない。
胸を揉むと手首を掴まれ、顔をそむけた。
「美菜ちゃんが……」
「まだしばらく出てこないよ」
「そうじゃなくて、彼氏でしょ?」
「そうだけど、可愛い子には興味が湧くよ」
「可愛いなんて、言われたことないよ」
「ほんとだ」
「聞いてないの?」
「何を?」
「女じゃないこと……俺、男だよ」
真奈美の目の動きにはかすかな動揺が見えた。

「聞いたけど……」
瀬野は真奈美の首筋に顔を埋めた。真奈美の吐息が洩れた。
「女の肌の匂いだ。いい匂い」
耳たぶを唇で挟んで息を吹きかけた。
「やめろ……」
力のない言葉が洩れたが拒絶はない。
 ふたたび唇を重ねた。
「う……」
シャツの下から手を入れて乳房を掴む。また手首を押さえられたが強い力ではない。
「男だって言っただろ……」
「それでもいいよ。男同士っていうのもありだろう?」
「そういう趣味、ないよ」
「男はきらい?」
「重いんだ。存在が……」

 小さいが柔らかい乳房だった。指で乳首を擦ると真奈美の体が強張った。
(感じている)
滑らかな肌。華奢であっても肉付きは女の手ごたえである。美菜以外の『女』に触れるのは久し振りである。瀬野は昂奮した。
 シャツを捲って乳首に口をつけた。真奈美の首に血管が浮き出ている。拡がる快感に耐えている様子だった。
 瀬野の手が太ももに及んだ時、真奈美は跳ねるように起き上がった。

「もう、やめろよ」
息が乱れていた。
「ごめん……可愛かったから……」
瀬野を見つめる眼差しに非難の色はない。むしろうろたえるように心もとなく見えた。
 浴室の扉が開く音がして真奈美はタオルをかけて背を向けて横になった。

 部屋の電気を消し、ダイニングに移って煙草を喫った。
(無茶なことをした……)
 初めて会った美菜の後輩に……。
だが、後悔はなく、真奈美に向っていく好奇の昂奮は冷めることなく続いていた。

 キスも受けた。胸も触った。男だと言いながら、
(俺の行為を受けた……)
遠慮や、突然のことに戸惑いがあったとしても、敵意や嫌悪を見せることはなかった。それに、
(感じていたはずだ)
十分な女臭を持っている。『女』として感じながら男だという。
 何かある。あったのだ。……

 夜、さりげなく真奈美の手に触れた。反射的に離れるのをさらに触れ、そっと握ると、もう逃げなかった。

 汗ばんだ手は熱い。少し強く握っても握り返してはこないが、引っ込めることもしない。
 乳首まで舐めた行為をどう思っているのだろう。受け入れた……とはいえないが、不快に思ったのならいま触れている手を離すにちがいない。
(いま、どういう心の状態なのだろう……)
模索の心理は真奈美の肉体への欲望となり、瀬野は勃起した。
(これを握らせてみようか)
ふと思ったが、さすがに本気ではなかった。

(明日だ……明日真奈美がどういう行動に出るか……)
美菜は勤め先の棚卸でいつもより遅くなる。その後少し飲んでくるかもしれないと言っていた。それは真奈美も聞いて知っている。
「ごはんはうちで食べるから何か出前でも取っておいて」
「何でもよければ作っておくよ」
真奈美は言ったが、それは瀬野が仕掛ける前のことだ。
(こうなったあと、気持ちはどう変わったか)
帰ると言い出したら完全に拒否されたことになり、ここにいるにしても、もう一度触れてみて態度を見極めなければ判断はできない。その曖昧な状況が疼くようで堪らなかった。
  






 




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