(1)-2
「その子、イッタの?」
「うん……たぶん……」
「美菜も?」
「あたしは、そこまでは……」
伏せた目元がほんのり赤い。思い出しているのだろうか。
(美菜もイッタのかもしれない……)
戸惑いを隠すような微妙な表情から、少なくともかなり感じたことが想像された。
「感じた?」
「だって……硬いのが当たるんだもん」
「硬いのって……」
「クリ、だと思う」
「でも、女同士の正常位でアソコが触れるのか?」
交差して押し付ければ密着するだろうが、互いに割れ目なのだから一方が脚を閉じていては接触しないと思われる。それにしても恥骨やその膨らみを擦り付けたということだろう。
「それが、触れたのよ。あたしのクリと割れ目に……中に入りそうだった」
「指じゃないの?」
「指じゃないわ。それならすぐわかる」
「へえ、どういうやり方なんだろう」
瀬野はその場面を思い描いて昂ぶった。美菜を引き寄せて割れ目に顔を埋めた。
「ああ!いい!」
(もっと感じる舐め方を教えてやる)
口をつけてあまりに多量の愛液に驚いた。
(さっきより熱くなってる……)
話しているうちに昂ぶってきたのかもしれない。
瀬野がコンドームを着けはじめると美菜は脚を開いて待ち受けの体勢になった。胸が忙しなく上下している。一気に突き進む状況だ。
「うう!」
根元まで突き刺し、彼女の二の腕を取って引きつける。美菜の中に納まった一物が喘ぐように硬直の限界に悶える。
「その子に舐められて、美菜も舐めたの?」
「いや……」
歪んだ美菜の顔はまだ語っていない行為を白状したようなものだ。昂奮して女同士絡み合ったのだろう。
「美菜!」
瀬野の抜き差しの激しさに美菜が呼応した。
「もっと!もっと!」
瀬野は重なって腰を煽った。美菜も突き上げてくる。
「もう、だめ!」
美菜の口が瀬野の肩に押し付けられた。彼女が絶頂に達する直前、必ずそうする。声を押し殺すためだ。時には歯形をつけることもある。ぬめりがいっそう増量され、痙攣が始まった。
「うぐ!ううぐ!」
美菜の唇が吸いつく。
「くうう!」
二人の体が凍結したように一瞬の硬直に強張った。
日曜日は朝からどちらからともなく求め合った。
(数日間、ゆっくり愛し合えない……)
言葉にしたわけではないが、そんな想いが2人にあったのだと思う。セックスをするなら方法はある。瀬野のマンションに行くなり、外で会えば可能だ。だが、ゆったりできない。何もかも忘れて没入できない気持ちの問題であろう。
真奈美と二人きりだとまた『彼女』は求めてくるかもしれない。だから瀬野にいてほしい。
「はっきりいやだって言えば?そういう趣味ないからって」
「だって、あの子、自分は男だって言うから……」
何だか深いものがありそうで言えそうもないという。
複雑な表情を見て瀬野はふと思った。
(もしかしたら、怖いのかもしれない……)
真奈美の性癖は元々持っていたものではないのだろう。つまり女なのだ。何があって美菜を求めたのかはわからないが、たまたま身を任せて美菜は思いがけず感じてしまった。もしエスカレートしてしまったら……。
そんな不安があるのかもしれない。
「2、3日か……旅行っていうこと?」
「何も言ってなかったけど」
「また愛し合いたいからかな」
「いやよ」
「だってその時応じたんだから、向うもその気があるって思ってるかも」
「だからここにいてって頼んでるんじゃない」
「俺がいることは言ってあるの?」
「言ったわ。ちょっと驚いてたけど、それでも泊めてっていうからそれ以上言えないもん……」
「だけど、何か息が詰まりそうだな」
「お願い、ここにいてね」
美菜が抱きついてきて上になった。
「一緒にいてよ」
「わかったよ」
唇を押しつけながら、瀬野は会ったこともない真奈美という『女』に興味を膨らませていた。