役員昇進の贈り物は悦楽の世界への入り口-1
涼子が出社すると、取締役の前川部長から呼び出された。
会社には、取締役会主催の経営戦略会議があった。
取締役と、選抜された社員による、将来の経営戦略の構築が目的だ。
前川部長は、入社してまだ数か月の涼子が、戦略会議のメンバーに選抜されたと伝えた。
社員で、メンバーに選ばれたのは、涼子が二人目だと言われた。
もう一人は、創業当時からの年配の妖艶なベテラン社員だ。
商品保管室から目撃した、役社長との激しいセックスをしていた女性だと気付いた。
「 えー? 私に、そんな大切な仕事を? 」
前川部長は、不安げな涼子の言葉を遮り、
「 社長が、一存で決められました。 戦略会議の最初の追加メンバーですよ 」
笑みを浮かべながら、やさしく、嬉しそうに話しかけた。
「 それから、戦略会議のメンバーは、役員待遇ですから、役員手当が支払われます 」
役員待遇では、机や椅子の調度も格が上がり、タクシー通勤が認められる。
涼子は、今の実績給に匹敵する額の役員手当が、固定給として支払われることを知り、
会議のメンバーになることよりも、役員待遇と、収入が倍増することを喜んだ。
役員待遇になっても、涼子の日々の会社生活に大きな変化はなかった。
今まで通りの営業を務め、電車を使った通勤を続けていた。
涼子にとって初めての戦略会議が開催されることになった。
出席者は、社長と、二人の取締役部長、年配の社員、そして涼子の5人だ。
二人の部長から、先月の実績と、今後の営業方針が、社長に報告された。
社長からは、社員の営業実績の賞賛と、経営方針、今後の努力が指示された。
会議が終了して、涼子には、役員報酬の明細と、社長との個人会議の予定表が手渡された。
個人会議の予定は、次の週の金曜日の午後に予定されていた。
金曜日の朝、挨拶が終わると、涼子は社長に呼ばれ、都内に同行するように言われた。
通勤ラッシュが終えた都内は、渋滞もなく、20分もかからずに目的先に到着した。
車は、都心の小さなビルの前に止まり、涼子は、社長に続いてビルの中に入っていった。
社長はすでに、ビルの中の一角にオフィスを契約していたようだ。
50平米ほどの、こじんまりしたオフィススペースと、廊下を隔てて、個室と、複数の会議室があった。
個室には、職務用の空間と、小さな厨房と、シャワールームを備えた寝室があった。
今の会社を、一回り小さくした規模のレイアウトになっていた。
誰もいない、がらんとしたオフィスで、社長は、話し出した。
「 フランスで中世から作られている自然美容液を、日本で初めて販売する会社を作ろうと思っている。 その会社の、初代の社長を君にやってほしい。 」
涼子は、突然の話に、内容が全く理解できないまま、茫然としていた。
経済的に裕福な中年女性向けの、自然成分の高級化粧品を、男性社員によって訪問販売する新規事業を涼子に、任せるとのことであった。
フランスの製造会社からは、すでに試供品が届いており、対象となる訪問販売候補の女性リストは、名簿業者によって、既に3,000人分が収集されていた。
涼子は、オフィスの調度品の納入業者と、オフィスレイアウトを決定し、電話やインターネットの設置を指示するように命じられた。
さらに、一番重要な、男性社員の採用のために、リクルート会社によって、経験のある若い営業社員に転職が勧誘され、数十人の候補者が集められていた。
社長からは、女性として性的魅力を感じる男性を選ぶように助言があった。
経済的に裕福な中年女性の性的な感情を高揚させると、営業の成果に結びつけることができる。
涼子は、時間的にも制約のない、独身の男性を選ぶことにした。
涼子は、リクルート会社に、履歴書と全身の写真を要求した。
涼子は、男性の経歴や履歴よりも、外観の姿勢を見ただけで、好き嫌いを決めてしまう性癖があった。
長身で、姿勢の良い男性や、水泳選手のような水着姿の男性の写真に、心を動かされた。
涼子は、短時間で、第一期生の5人の男性を選ぶことができた。
涼子の選択基準は、写真から発散される性的な魅力を一番、重要視した。
自分が購入者になったつもりで、近づいて欲しい男性を選んだ。
涼子は、実際の性的な魅力は、自分で試そうと心に決めていた。
次の週の月曜日に、5人の採用社員の面接を、都内で一番高級なホテルのスイートルームで予定した。