〜 補習C 〜-5
「ふっ……ふっ……」
肩で息をしながらあたしを見つめる少女。 どこか満足そうで、同時に不安そうな色もあり、ジッと凝視して視線を逸らさない。
「……」
あたしは心の中で溜息をついた。 これは、全く予想外だ。 くるり、踵を返す。
「っ!? んっ、んーーー!」
呻く50号に一瞥もせず、これまで小部屋を後にしたのと寸分違わぬ態度でドアを閉める。 少女はまだ何か叫んでいるようだが、防音扉に遮られて何も聞こえない。
まったくもって下品な排便だった。 これでは、単に溜めこんだ汚物を一気に吐き出しただけではないか。 表情もよくない。 真剣な、まるで自分が頑張っているかのような表情では、見ている私は楽しめない。 せっかく排便という、本来見たくもないものを見てあげているんだから、せめて自分が排便を楽しまなくてはならないわけだ。 そうでなければ見てくれる人、つまりあたしに対して失礼だと、思い至らないのだろうか。 そこのところが甘いために設定した補習だというのに、これでは先が思いやられる。 呑み込み方にも不満が残る。 液体を流し込むように、一定のリズムで干して初めて感慨深い。 そもそもブリブリだの、ゴクゴクだの、耳障りな音をたてる時点で論外だ。 便の量以外は、すべて駄目だといっていい。
「……」
溜まった唾を嚥下する。 口の中は、あたしの心境よろしく、饐えた苦味でいっぱいだ。
まあ、50号には時間がある。 30号と違って、50号はすでに生命の危険は去っているし、あとはいつ気づくかの問題だろう。
さて、規定の時間は過ぎた。 プログラムB、Cには少なくとも半日は様子見が必要と思う。 また見せしめのために、敢えて新人にプログラムを提案する教官がでるかもしれないが、それは別の講習室に回せばいい。 あとひとつだけ確認し、今日の講習室監督はしばし休憩にしよう。 講習室からでたところで寮務が待っているわけだが、それでも一人きりでないだけ気が楽になる。
。
12時まで下着なしで過ごすのは構わないとして、夕食はどうしようか。 下着の隙間を通して、何とか食べるしかない。 便を頬張るという点では、あたしも30番も50番も、何ら変わらない。 そんなことを考えながら、補号であるあたしはモニターのスイッチを切り替えた。 講習室の日誌に『プログラムB開始』『プログラムC継続』と走り書き、続いて『プログラムA確認』とメモする。 モニターは第1講習室の向いにある、補習用トイレに備えられた監視カメラの映像を映す。 そこには、丁度別の女生徒が、補習対象生徒を使用するため入ってきたところだった。