恋路 〜入学そして出会い〜-2
「えー、では全員席についたところで俺の自己紹介をしようと思う。俺の名前は武田信秀、26才だ。顧問する部活は水泳部。担当は体育だ。なにか質問は?」よし、さっきの怨みだ。恥を欠かしてやる。
「先生は水泳を教えるとき女子の何処を見ているんですか?」
へっ、どうせ胸だろ?
「ん〜取りあえず筋肉、身長、柔軟性だな。さすが水泳確定組、熱心だな!!」・・・そうなのだ、さっきの条件は水泳部の入部だったのだ。つまり俺と勝也は水泳確定ってことよ。はぁ思い出したくない事を思い出してしまった。しかも俺の策略も軽くかわされたし。 キーンコンカーンコン 「よしっ今日はもう終わりだ帰っていいぞ」
俺はふと周りを見渡してみた。取りあえず隣は・・・あれっ?どっかで見たことがあるようなないような・・・すると隣の少女も俺の視線に気付いてこちらをむいた。一瞬二人の視線が硬直した。
「・・・・・」
「・・・・・」
先に沈黙を破ったのは俺だった。
「・・・雪奈」
「・・・将君」
そこにいたのは小6のときまで隣の家に住んでいた織田雪奈(おりたゆきな)であった。彼女は小6のときここ千葉から九州に引っ越したのであった。俺はその時とにかく泣いた。泣いたところで何も変わらないとわかっていたがそれでも泣いた。もう一生会えないと思っていた。
「お、お前九州に居るんじゃなかったのか?」
「実はね、こないだお父さんの単身赴任が終わって今日の入学式に合わせてあの家に帰って来たんだ・・・」
雪奈は背が高くて肌が白く顔も綺麗で黒くて綺麗な髪は胸まで伸びていた。
昔から綺麗な顔ではあったが、今や美しさはさらに磨きがかかり、正直戸惑さえで覚えた。
「あ、ヤバイ。今日用事があるからまた“後で”ね!!」といって雪奈はいってしまった。次に逆隣の席を見てみるとこれまたどっかで見たことがある顔であった。・・・あっ、わかった!!足利先生だ。足利先生にそっくりだったのだ。彼女は俺の心を見透かしたように言った。
「あたしさぁ保健の足利っているじゃん?あれさぁあたしのおねぇちゃんなんだよね。よく似てるって言われるし。」
なるほど、どうりでそっくりなわけだ。ブロンドのパーマのかかった長い髪(先生は茶色だけど・・・)、ふくよかな胸、育ちの良さそうなととのった顔そして唯一違うことといえば背の高さである。夏美(姉)はモデルのように背が高いが、秋乃(妹)は少し小柄である。彼女は気にしているらしいが、
「別に良いんじゃねーの?それも個性ってやつだし、小さいほうがチョコチョコしてて可愛いじゃん」
ふと彼女を見ると耳のさきまで真っ赤にしていた。 なにしてんだろ?
俺はわけがわからずそのことは流して自分の自己紹介をした。
それから他愛のない話しをしていつの間にか外も真っ暗になっていた。
「あーもう真っ暗じゃん」「そろそろかえろうぜ」
「ねぇねぇ将はどっからきてんの?」
・・・いま下の名前で読んだよな?
「え?木更津だよ。チャリですぐだし。」
「えー本当?私もだよ〜」結局方角も同じことから一緒に帰ることになった。
「ところでさぁ私のこと秋乃でいいから、他の友達もそうよんでるし!!」
そうこうしているうちに秋乃の家の前についた。つーかでけぇ。とにかくでかい、どうやら彼女の家は金持ちらしい。
「ところでさぁ将って織田さんとさっき仲良さそうにしていたけどどういう関係なの?」
「え?別にただの幼なじみだよ。」 ・・・いきなりどうしたんだ? 「そう!!よかった。じゃあまた明日ね!!」
と言って秋乃はいってしまった。チョコチョコとした歩きかたがまた可愛いらしい。
家に帰ると隣の織田家には確かに明かりが灯っていた。
「本当に帰って来たんだな・・・」
家に入るとそこには見馴れない靴があった。妹のものにしては大きすぎるな。
・・・お母さん、また年甲斐もなく若い人みたいなもの買ってきたのかよ、その金をもっと子供に使えっての!!