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〈熟肉の汁〉
【鬼畜 官能小説】

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〈忌諱すべき覚醒〉-3

『わ〜い!ママ、元気になったんだね?』

『そ…そうみたいだな。彩矢もパパと一緒に心配してくれたから、ママは元気になったんだぞ?』


何か取り立てて素晴らしい事があった訳ではない。
何も“無かった”事が、温かな時間を作り出したのだ。


『まだ恭子はゆっくりしてて。代わりに俺が美味しい料理を作るから』

『彩矢はカレーがいい!カレー作ってよ、パパ!』


完全に闇が晴れた訳ではない。
それにあの男達が、恭子を簡単に諦めるとも思えない。
今のこの幸福感は、非情な表現を用いれば、砂上の楼閣でしかない。

だが、恭子は今の幸せな時間によって、僅かにだが救われた。
自分が想う以上に、耕二や彩矢に想われていると知ったからだ……。




『ママ、行ってきま〜す!』

「は〜い、行ってらっしゃい」


あれから数日。

あの男達からは何の連絡も、脅迫も無い。

弘樹からは最後の密会の誘いのメールは来ていたが、大切な物に気付かされた恭子は、それには乗らなかった。

週末を家族水入らずで過ごし、慎ましくも楽しい時間を共有しあう。
それは正に、家族の理想とも呼べる時であった。


『行ってきまぁす!』

「は〜い、今日も気をつけてね」


楽しかった週末は終わり、また今日から恭子は日中を一人で過ごす。
朝食の片付けをし、洗濯機を回す……と、忘れかけていた着信音が、再び鼓膜を打ち付けた……。


(……ま…また……)


戦慄に手は震え、だがしかし、取らない訳にはいかない……恭子は強張った表情で携帯電話を取ると、通話のボタンを押した……。


{久しぶりだな、奥さん……そろそろオマ〇コが疼く頃だと思って、電話したぜぇ……}


相変わらずの下劣極まる台詞に、鳥肌の立つ声……背筋に冷たいものを感じながらも、それでも恭子は携帯電話を離せないでいる……。


{今日はリクエストに応えて貰うぜ?あの胸元の開いたセクシーな青いワンピースと、金色のゴージャスな下着……それと黒いハイヒールで来い……}

{あの服が忘れられなくてよぉ……なあ、いいだろう?}

{一時間だけ待ってやる……アパートの前で待ってるからなあ……}


恭子が窓から道路を見下ろすと、あのミニバンが確かに止まっていた。

今更、何を言っても男達の要求に変わりようは無く、恭子は苦虫を噛み潰したように唇を歪め、クローゼットの中から指定された衣服を取り出した……。






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