1. Someone to Watch over Me-17
指先が強く押し込まれてくる。ジーンズの中でショーツが食い込んで捩れ、あられもない姿になっていっているのが分かる。クロッチの縁から顔を覗かせている秘肉は指の表面を温柔に滑らせるほど蜜を纏っていた。ジーンズを履いているのに、必死に閉じ合わせている下腹部から、クチュッ、クチュッという音が仄聞こえてきた。
「お、……、音立てないでっ」
思わずそう言っても、平松の指が悦子の門を擽ってくる。もう緩んで開いているのに、戸口のところばかりを撫でてくる。なのに悦子の股間は経験したことがないほど蜜に溢れ、ジーンズに恥ずかしい汁を垂らしてしまう心配が襲って、「……よ、汚れるっ……」
それを聞いた平松は微笑んで少し身を起こすと両手でジーンズの腰を掴んで引き下ろそうとしてきた。腰を浮かせて加担しようとしていないのに、力強く脱がされて、ふと脱がす所作が男らしいという思いが頭をよぎる。こんなふうに身を剥がされたことなどない。だが下腹部が外気に晒された感覚に、思わず心配になって頭を上げてそちらを見やると、さっき新たに履いたはずのショーツは中心から僅かに片側に寄って食い込んでいた。選んだショーツは人に見られても恥ずかしい意匠のものではなかったが、悦子の視界にはその縁からヘアが漏れ見えているのが映った。最近手入れを怠っていたその翳りがあられもなくはみ出ているのが平松の視界にも映っているだろうから、
「ちょ、み、見ないで……」
と両手で隠そうとした。そこへの羞恥のせいで他の場所に気が回らなく、突然平松に長く伸びた脚の膝裏に手を入れられると、片脚を肩に担ぎ上げるように開かれた。「うあっ……! なにすん……」
手で隠していても、割り開かれた脚の間を隠しおおせるものではなく、恥しく濡れて内ももの辺りまで漏れた蜜が光っている場所が平松の目に晒されると、
「やだぁっ……」
と股間を手で隠すことは諦めて、両手で顔を覆った。
「すごく、感じててくれて嬉しいです」
うっとりとした平松の声が聞こえて、悦子は顔を隠したまま首を左右に振った。
「見ないでって」
「いやです。見たいです」
吐息を担がれた脚の太ももに感じた。顔を近づけていっているということだ。
「……ま、待って。ほんと。……ね、お願い」
「どうしてですか?」
「んっ……、そ、そんなの聞く?」
目覚めたらとんでもない状況に陥っていたのに、それを解決する前に、まさにその相手と『続き』を始めてしまっている。しかも今まで生きてきて経験したことがないくらいに悦びの反応が体から湧き起こっているのだ。
(もぉっ……、何してんのよ、私……)
覆った手のひらの下で目を閉じ道念を鼓舞して、まず平松を制し、そして自分を制さなければと努めようとした。
「……どうしてですか?」
が、更に平松の息を下腹部に近く感じて、もう一度同じ問いを投げかけられた。
「は、恥ずかしいからに決まってんじゃんっ」
「恥ずかしがってる権藤チーフ、可愛いです」
「はあっ!?」
両手を顔から外して平松の方へ睨み顔を向けてやろうとしたのと同時に、唇がショーツの頂に吸い付いた。「うあんっ……!」
シーツを引き掴んで仰け反って、脚を閉じて平松の頭を挟んだ。開いた唇を秘丘に密着されて、熱い息を吹きかけられながら舌で穿つように蠢かされる。舌が寵を施す度にはしたなく腰が暴れのたうった。
「……可愛いです」
平松が悦子の蜜を舐めとりながら言うと、悦子は喘ぎを漏らしながら、そんな声を聞かせたくなくて、何か言おうと、
「お、風呂……、入った……? き、昨日……」
息絶え絶えに唐突な事を言った。
「入ってないです」
「んっ……、き、汚いって」
「汚くないです」
平松はうずくまったまま、手を回してショーツの縁に指を入れると、グイッと引いて顕になった媚稜に直接ふるいついた。
「ああっ……、汚いってばっ」
ジュルッと音を立てられて、悦子は枕の緒を握りしめて身を捩らせる。
「汚くないです」
啜る音を繰り返しながら、唇で柔襞を挟みつつ這わせ、「おいしい……」
「何言ってんのよっ……、もおっ……」
卑猥な表現に呆れた声を漏らしたが、引き続き雛先や襞を吸われると身ぶるいしながら何度も甘ったるい声を上げて平松の舌を受け入れ続けていた。もう彼を退けようとする発想すら湧いてこない。平松の舌に自分から擦り付けるように腰が動いてしまう。
(なにこれ、気持ち良すぎる)
男の舌を秘所に感じたことはある。だが、仰向けになった男を跨ぎ、腰を下ろして擦りつけてやったことしかない。そう懇願されて、してやっただけだ。そんな行為をはたらく恥ずかしさを薄めるためと、被虐の歓喜に満ちた男への気遣いのために、軽蔑や揶揄の言葉を吐きかけてやったが、それは悦子の方の性楽を煽ってこなかった。確かに性感の集中する体の中心を擦り付ければ快感が巻き起こってはいたが、今、平松の方から愛しまれる快感はその時とは比べ物にならない。