略取3-5
モニターから伸びたコードを壁の端子つなぎ、プラグを差し込んだ。配線が終わると黒人はぎこちなくお辞儀をして部屋から出て行った。
「あの女はやつに任せてあるのです」
「ま、任せて……」
ということは、あの男は沙也加とやりたい放題。首がブルッと震えた。黒人がここにいるということは、近くに沙也加がいる! この建物のどこかに監禁されているのだろうか。雁字搦めに縛られて……。
岩井が液晶モニターに向かってあごをしゃくった。沼田は姿勢を正してモニターに向き直る。遠隔操作なのだろう、モニターの電源が入った。
殺風景な部屋に、髪の長い女がベッドの上でうつぶせになっている。
背筋がぞくっとした。
両手はバンザイの形でパイプでできたヘッドボードにくくりつけられている。九十度開いた両足もベッドの脚にロープで固定されている。身につけているのはブラジャーと小さなパンティだけの扇情的な姿だった。理想的な女のプロポーション。女は下村沙也加秘書だ!
黒人の姿が見えた。沙也加が身じろぎする。チラッと岩井を見ると半眼に閉じた目でモニターを見ていた。慌てて視線をもどす。この部屋を出てすぐにモニターに黒人が映った。ということは目と鼻の先に沙也加がいる。
男は沙也加のふくらはぎに手を置き、ゆっくりと撫で上げていく。モニターから音声は聞こえない。沼田を悩殺してやまない、魅惑的なヒップで黒い手が止まった。秘丘がキュッと震えた。沼田は自分の唾を飲み込む音に肝を冷やす。
男はにやけた顔で撫で回している。動けない沙也加は身もだえする以外にない。よれたパンティに沼田の下半身は痛いほどいきり立った。男の股間もふくれているのがわかる。それを隠そうともせず、挙げ句に手でさすり始めた。
ブラジャーのホックをはずして、男は画面から消えた。身につけたものはパンティだけとなった。本人からすればとんでもない状況だが、夢に見た沙也加の裸だ。瞬きする間も惜しい。沙也加が犯されるシーンを見ることになるのだろうか……。
再び画面に映った男はブリーフ一枚の姿だった。焦げ茶色の肌が光っている。ビキニパンツの上からはみ出た勃起したペニスを隠そうともしない。あれだけの逸物であれば見せびらかせるということだ。この男はこういったことに慣れている。
――男の手に鞭を見た。
動揺する沼田は岩井を見たが表情に変化はない。沙也加の拉致は岩井の指示だろう。いくつもの犯罪行為に手を染めていても岩井は平然としている。
盗み見ていた岩井の顔が不意に笑った。画面に目を戻した沼田は息を飲んだ。沙也加の体が跳ねていた。
モニターは無音だが耳の奥に音が聞こえる気がする。いや、かすかだが本当に聞こえている。やはり近くにいるのだ。鞭が振り下ろされるたび心臓が竦みあがった。
美しい肌にみみず腫れが増えていく。男は嬉々とした顔で抵抗できない沙也加を痛めつけていた。ブリースの脇から完全体となったペニスを引き出して扱き始めた。男は恍惚の表情を浮かべている。先端から一回だけピュッと体液が飛沫した。
黒い筋肉を盛り上げ、鞭打ちが続く。身をよじって次の殴打に備える沙也加の姿があまりに哀れだった。惨い女の扱いに戦慄した。まさか、恵もこんな仕打ちを! 全身が粟立った。沼田は跳ねるように立ち上がった。
「許してやってください! お願いいたします!」
岩井の前で土下座していた。愛して止まぬ沙也加の苦痛にゆがむ表情は見たくない。泣き叫んでいる姿はもう見たくない。
「もう、叩くのをやめさせてください!」
床に頭をこすりつけた。沼田は泣いていた。己の口から嗚咽が聞こえていた。
ケータイを耳に当てた岩井の一言で男は打つのをやめた。
「沼田さんの言うことを聞いたのですから、あの女の件はこれですぞ」
おかしそうに沼田の顔をのぞき込み、人差し指を唇にあてた。
「も、もちろん、わかっております。この件は決して」
「うん、それがいい」
画面の中で男が沙也加の腫れ上がった傷に舌をはわせている。
「ワシを隠れ蓑にしおって、あの男はもめ事ばかり起こすのだ。いよいよにっちもさっちもいかなくなったのです。大事になる前に国に返さねばなるまい」
男は沙也加のパンティを引き裂いている。
「無抵抗の女を痛めつけるのが趣味でのう。向こうでも年端も行かぬ娘やら、人妻やらをひどい目にあわせてきた。こっちでもそれで問題を起こしたのです。困ったものだ」
のんびりと葉巻に火を付ける。
ロープを解き、黒い手が括れた腰を鷲掴みにした。沙也加を床に下ろして腰を突き出させる。ヒップの中に長大なペニスを差し込んでいった。直ちに男は沙也加のヒップに腰をぶつけた。ダイナミックな反復運動が繰り返される。いたたまれず、沼田は視線をはずした。のどの奥で嗚咽を繰り返していた。
「あとで沼田さんも」
沼田は手と首を激しく振った。涙が飛び散る。
「となると、あの男がいなくなれば、ワシ専用の肉壺に作り替えるしかないのかのう。壊さぬよう、念を押しておかねばなるまい」
のんびりとした口調で鼻と口から大量の煙を吐き出した。