〈熟肉の汁〉-4
(ちょっと寒いかも…？)
今日は少し肌寒い天候であったが、弘樹と会ったら冷えた身体は“暖まる”のだ……夕闇は迫り、気の早い星がチカチカと瞬きを始めている……目指す場所はもうすぐだ……。
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「………はッ!?…こ……此処は…？」
恭子は寒さに目を覚ました。
目の前には満天の星空が広がり、周囲はザワザワと騒ぐ作物の枝葉が犇めいている。
慌てて起き上がり辺りを見回すと、発泡酒などの段ボール箱を敷き詰めた上に寝転がされており、しかもそこは自分達の住むアパートの前の畑の中だった。
「……な…何で………」
確かに弘樹と会う為に、恭子はショッピングモールの駐車場に向かって歩いていたはず……と、悪夢のような記憶が突然呼び戻された……。
(まさか…まさか私…ッ………!?)
薄暗い道を歩いていたその時、いきなり背後から何者かに抱き着かれ、悲鳴をあげる間もなく意識を失ったのだった……恭子はワンピースの裾から手を突っ込み、股間に異状が無いか確かめた……しっかりとパンティは穿いているし、股間に悪戯された形跡も無い……胸を触ってみても異状は無く、ブラジャーも乱れずに豊満な胸肉を支えてくれている……それに傍らに落ちていたハンドバッグの中から抜き取られた物も無かったし、財布の中身もそのままだった……。
「……ひ…弘樹さん……」
恭子は慌てて携帯電話を見た。
時刻は２１時を過ぎており、着信とメールでいっぱいになっていた。
弘樹に今起きた出来事を言おうか……そんな事を考えてみたが、特別な被害を受けた様子も無かったし、こんなアパートの目の前で騒ぎを起こすのはマズい……。
とりあえず適当な言い訳をメールで送信し、恭子は自分の部屋へと帰った。
なに食わぬ顔を必死に作り、いつものママ友の集まりからの帰宅のように、努めて明るく振る舞ってみせた……。