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不貞の代償
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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略取2-3

 数日後、ばか丁寧な日本語の太い声が明日来て欲しいと連絡してきた。この声を沙也加は覚えている。相手は会社を休ませて申し訳ないと、岩井からの伝言を伝えてきた。こちらの要件を話そうと思ったが、電話の主は聞いても分からないので直接話して欲しいと言う。先生と会うことは会社の人間にはいわないよう釘を刺されたが、秘密裏に行動している沙也加は会社にいえるはずもない。
 次の日、岩井邸に向かった。
 出迎えたのは連絡してきたあの黒人だった。ばか丁寧な電話の対応とは違い沙也加の横に立ち、なれなれしく話しかけてくる。ここへは何しにきたのか、恋人はいるのか、美人でスタイルがいい、好み男は、ヒップがキュート、セックスは好きか、さらにはペニスの大きさは気にするかなど、だんだん卑猥な話になっていった。質問のたびに躰に触れてくる。気を抜けば、腰を抱かれてしまいそうだ。
 屋敷の中に入ると岩井がいた。黒人は慌てて敬礼をして去っていった。
 背丈は黒人より低いが横幅があるせいで、より巨漢に見える。そばに寄ると強烈な体臭を感じた。まるで獣のような匂い。
 簡単に自己紹介をすると「不愉快な思いをさせましたら、申し訳ないです」と岩井が頭をさげたので慌てた。見た目は怖いが態度は紳士然としている。
 応接室とおぼしき部屋に通された。ワインセラーからワインを抜いて、上にのっているグラスを手に取った。横にある冷蔵庫からチーズやクッキー、サラミなどがのった皿をテーブルに置いた。
「どうぞお構いなく」と遠慮したが「そう言わずに、これしかありませんので」と、なみなみついだワイングラスを目の前に差し出した。
 テーブルをはさんで向かいに岩井が座る。
「どんな要件で来られたのかな」
 恐ろしく太い指でワイングラスをつまみ、一気に飲み干した。チーズを摘む筋肉質の分厚い手を見ないようにする。
「単刀直入に申し上げます。当初、先生が反対されていた保全地区の件ですが、どの時点でお考えが変わられたのでしょう」
 鷹揚な仕草で葉巻を取り出して、目で確認してから火を付ける。
「うん、沼田さんに説得されましてな、お宅らはなかなか凄腕の営業マンをよこす。田倉さんもそうだった。できる男が疎まれると転落するのも早い。妬みそねみは政治の世界も似たようなもの。そうそう、沼田さんは部長さんになりましたな。ワシもよろこんでおりますと伝えてください」
 岩井から見れば会社の部長など平同然なのだろう。明らかに質問を予測した回答だ。
「こちらにいらっしゃる佐伯奈津子さんとはどのようなご関係でしょう」
 腹筋に力を入れて聞く。
「関係とは男と女の、という意味かな」
「それらも含めて」
 岩井はとろんとした目で見返した。


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