きっかけ-2
「今日は寒いね、希美お風呂入ってきたら?」
「食べたばかりだからちょっとゆっくりしたいな、先にいいよ!」
「じゃあもう少ししたら入るから…」
寿紀は10分程経ってからお風呂に入り、20分であがった。
段々とドキドキし始めて、時間の感覚が狂っているようだった。
風呂からあがり脱衣所で自分をターゲットにしてどのアングルが良いか最終調整してから…動画スイッチを入れた。
「あがったよー」
「え?早かったね〜」
テレビを観ながら希美が返事する。
「せっかく熱めにしたから、入っちゃえば…」
「う、うん、わかった、入る…」
テレビに見入る希美。
(録画時間無くなっちゃうよ…お笑いなんてどうでもいいじゃん)
寿紀は少し焦っていた。
「電気点けたままにしとくよ〜」
「CMまで待ってよ!もぉ…」
希美が反発しそうになる。
ここで焦ったらアウトだと感じた寿紀は放っておくことにした。
それから5分程してCMになった。
「じゃあ、入ろっかなぁ♪」
希美はクローゼットから替えの下着を取り出し、脱衣所に入った。
そして…ドアが閉まった。
10分…20分…30分…まだあがらない。
とても長く感じる。
(ガチャ…ッ)
浴室のガラスのドアが開く音が聞こえた。
ドライヤーや洗面台の化粧水の容器を取り上げたり置いたりする音。
「ふ〜ぅ…暑っー」
希美がやっと出て来た。
「歯磨きするから」
寿紀はそう言って脱衣所に入り、無事にカメラを回収すると、またポケットに突っ込んだ。
1時間後に希美は2階の寝室にあがったが、寿紀は調べものをすると言ってパソコンを抱えてリビングに下りてきた。
(いよいよだ!)
心臓の鼓動が聴こえてきそうだった。
カメラからマイクロSDカードを抜き出し、USBアダプターでパソコンに落とし込む。
フォルダに取り込まれたひとつの動画。
そしてクリックした…。