正夢〜希望〜-1
突き抜けるような青い空…眺めていると、白球が視界に入った。
どこまでも高く、遠く飛んでいく様子は、私達の未来のようにも思えた。
視界を落として、その白球を打った人を見つめる。こちらに気付いて手を振るあの人は…。
ピピピッ!!ピピピッ!!
「う、ん…」
耳障りなアラームを止めて、私はベッドから起き上がった。
「なんだったんだろう…」
とても不思議な夢だったが、いくら頑張っても最後の部分が思い出せなかった。
「あ、早くしないと待ち合わせに遅れちゃう!」
夢のことはとりあえずおいといて、私は学校に行く準備を始めた。
大急ぎで準備を整えた私は、学校から最寄りの駅のベンチに座っていた。
「遅いなぁ…」
駅を見ると、これから学校や仕事へ行く人々がたくさん出てくる。これでは、彼を捜したくても捜せない…。
と、突然肩に手を置かれる。
『お姉ちゃん、元気ないねぇ?俺と一緒に遊びに行かない?』
後ろを振り向かなくても分かる。この声、この雰囲気、この手の温もり…。
「そのセリフ凄く古いよ高山くん」
『あ、やっぱり?』
彼…高山 渉(たかやま わたる)は、私…高久 珊瑚(たかく さんご)の彼氏で付き合ってもう五ヶ月になる。
進級して、渉くんと同じクラスになって。とても嬉しい毎日を過ごしている。
『じゃ、行こうか?』
「うん!」
二人で並んで学校までの道のりを歩く…なんでもないことなのに、とても幸せ。
この幸せがずっと続くといいなぁ…などと考えているうちに学校に着いた。
「あ、昨日高山くんが休んでる間に球技大会の役決まっちゃったよ」
『あ、そうなの?んで、おれ何に出るの?まぁ何でもOKだけど!』
「ソフトボールだって!頑張ってね!」
『あぁ!ソフトね!ソフト…ソフトボール!?』
「え!?…うん…翔が決めちゃったみたい」
『あの野郎…知っていてやりやがったな…』
高山くん、どうしたんだろう…ソフトボール嫌いなのかな…。
何が起こったのか聞くに聞けず、高山くんは機嫌が悪いままにクラスに直行した。