思い込み-6
ベッドの上の二人の身体は汗だくになっていた。
勇輔も冬樹も、長い間はあはあ、と大きく肩で息をしていた。
「勇輔、」冬樹が微笑みながら上になった勇輔の顔を見上げた。「すごく良かった。とっても気持ちよかった。ありがとう」
「俺も」勇輔も微笑みを返した。「今までで最高に燃えた」
「そう?」
勇輔は照れながら言った。「好きだ、冬樹」
冬樹は目を見開き小声で叫んだ。「やった! 初めて勇輔に好きって言われた」
「そ、そうだったか? 今まで言ったこと、なかったっけか」
「うん。今が初めて」冬樹は目に少し涙を溜めて大きく頷いた。「僕も好き、勇輔が大好き」
そして二人はまた固く抱き合った。
勇輔は冬樹の耳元で囁いた。「ずっと、こうしてくっついていような、冬樹」
「嬉しい……」
冬樹は幸せそうな顔で目を閉じて、また腕を勇輔の背中に回した。
「俺さ、」勇輔が静かに口を開いた。
逞しい勇輔の胸に頬を当ててその心臓の音が穏やかになっていくのをずっと聞いていた冬樹は目を開けて顔を上げた。「なに?」
「最初におまえに声掛けた時、真っ先にそのほくろに目が行ったんだ」
冬樹は自分の左目の下に指を当てた。「これ?」
「そうだ。いわゆる『泣きぼくろ』ってやつ」
「そうだったの」
「でさ、そこにほくろがあるヤツって、涙もろいとか男女の関係で苦労する、って聞いたことあってよ、こいつもそんな悩みがあんのかね、って思った」
冬樹はふっと笑った。「涙もろいのは当たってる。それに確かに苦労したね、男女の関係で」
「うららとのことか?」
「うん。でも苦労したのはうららさん。僕の身勝手で辛い思いをさせちゃったから……」冬樹は眉尻を下げた。
「だけどあいつ、もう吹っ切れたみたいだな」
「うん。そうみたい。僕が勇輔と付き合うことになって良かった、って言ってた」
勇輔は口角を少し上げて、穏やかに言った。「あいつとも仲良くしてやってくれよ、冬樹」
「もちろんだよ」冬樹も笑った。
「だけど、ほどほどにな」
「何それ」冬樹は呆れたような顔で微笑んだ。
勇輔は冬樹のその黒い点にそっと指を当てた。「俺たちは男同士だから、このほくろの言い伝えは無効だな」
冬樹はクスッと笑った。「そうだね『男女の関係』じゃないからね、確かに」
「俺、そのほくろ、好きだぜ」
冬樹は照れたように顔を赤らめた。「ありがとう。勇輔」
勇輔は唇を突き出し、冬樹の泣きぼくろにチュッとキスをした。
「勇輔にもほくろ、あるよね」
「え?」
「僕、知ってるよ」
「俺のどこにほくろが?」
「きわどいところ」冬樹はにこにこしながら言った。
「きわどい? どこだよ、それ」
冬樹は身体を起こし、勇輔の両脚に手を掛けた。
「お、おい、冬樹……」勇輔は焦ったように頭をもたげた。
「ここだよ。右足の内側の付け根んとこ」
冬樹はそう言いながら勇輔の秘部のすぐ脇にある小さなほくろを指で軽くつついた。
「そ、そんなとこに? ほくろがあんのか?」
「そうだよ。知らなかった?」
「知らなかった。だって見えねえだろ、自分じゃそんなとこ」
冬樹は勇輔の脚を抱えたまま、大きく開かせ、その場所にチュッとキスをした。
「ふっ、冬樹っ!」勇輔は赤くなって焦った。「は、恥ずかしいコトすんじゃねえっ!」
「あははは、勇輔照れてる!」
冬樹は再び勇輔に密着させて身体を横たえた。
「ご両親が知らなければ、僕が最初に見つけた勇輔の秘密。だね」
「嬉しそうにしやがって、こいつ……」勇輔は乱暴に冬樹の頭を撫でた。
冬樹はにこにこしながらまた勇輔の胸に耳を当て、目を閉じた。
勇輔は身体を横に向けて、冬樹を柔らかく抱いた。そしてふうっとため息をついた。
「おまえを抱いてっと、めっちゃ気持ちいい、っつーか、気持ちが落ち着く」
「僕もさ……」