キレイになってラブラブデート大作戦-9
「なーるほど、この娘を変身させるってわけね」
「そうそう、髪のセットとメイクはアタシがやるんだけど、いかんせんこの服がねぇ。ヒロなら身長も里枝ちゃんとそんなに変わらないし、服も合うんじゃないかって思って」
「うん、わかった! 旦那様をメロメロにさせちゃうくらい、綺麗にしてあげるわ! この娘、生活感丸出しの冴えない娘だけど、素材がいいから化けるわよ〜」
さりげなく二人とも超失礼。
そんな私の気持ちを知らない二人はニヤニヤしながら私を見た。
なるほど、天童さんがヒロさんを呼びつけた理由がわかったよ。
……でもさ。
二人して私を見るキラキラ輝いた瞳が、なんだか怖い。
センスのないワンピースに包まれた私は、普段の勝ち気な態度はすっかり遠くに行ってしまい、生まれたてのバンビのようにプルプル震えていた。
「さあて、里枝ちゃん」
「は、はい……」
「始めるわよ」
「はい……」
「まずはその服を全部脱ぎなさい」
「はいぃぃ!?」
サラッととんでもないことを言ってのける天童さん。
一方、ヒロさんは手際よく店内の窓という窓のロールスクリーンを下げ、さらにはお店の鍵まで掛けていた。
「開店前だけど、万が一お客様が入ってきたら大変だからね」
悪魔の笑みを浮かべたヒロさんはそのまま、バックルームのドアを開け、自宅へと戻っていった。
恐らく、私に貸す服を取りに行ったのだろう。
残るは、イケメンの皮を被ったオネエと私だけ。
「さ、時間がないんだから、とっととそのダサい服を脱いでちょうだい」
なぜかポキポキ指を鳴らしながら迫ってくる姿は、オネエとは言えやっぱり怖い!
咄嗟に逃げ出そうとする私の首根っこを掴んだ彼は、そのまま片手で私の身体を待合用のアイボリーのソファーに倒れ込ませ、すかさずマウントポジションを取る。
「ひ、ひいぃ……!」
「いいからアタシ達に任せなさい! 天慈くんの義姉様ってことで、アタシ達、フルパワーで頑張っちゃうんだからっ」
ウインクしながらぶりっこファイティングポーズを取るいい年したおっさんは、その直後に
「オラァッ!!」
「ギャーッッッ!!」
ドスの聞いた声で、私のまとっていた洋服に手をかけたのである。