バツイチ-2
「……ああ、由美っ、うぅっ」
年下のセフレのタケシは呻きなから腰を突き出して、由美の口の中に精液を出した。
ティッシュに口の中の白濁した精液を、鼻をかんだときのように由美は吐き出して捨てた。
パチンコデートのあと、ラブホでセックス。
他にはディスニーランドどころか映画も一緒に行ったことがない。
「めんとくせえ、泊まって帰りたいなー」
ホテル代も毎回、由美が払っている。
タケシはフリーターらしい。給料が入るとパチンコを打ち、由美とセックスする。
「だーめ、奥さんのところに帰ってあげて」
由美はタケシにそう言ってキスをした。
タケシは結婚しているが婿で相手の親との同居に耐えられずに、別居した。タケシは上司の娘と結婚したがプレッシャーに耐えきれず仕事を辞めた。
週末になるとタケシの部屋に奥さんが泊まりにくる。
夜勤や残業があり、土曜日曜関係なく不定期な休日のタケシを由美は必ず一泊したりさせずに、部屋に帰した。「平日に泊まりに来たことはあるけど」とタケシが言ったことがある。
由美は警戒しながらも、不倫を続けた。
タケシが「来年三月には離婚をする」と約束したが、三月になっても妻の母親が入院したなどと言い出して「あいつには言ったけど、待ってくれって言われた」
とタケシは由美に言った。
四月になって、妻の母親は退院したらしいがタケシは曖昧な返答を由美にするばかりである。
(離婚して、私と結婚するなんて言わなきゃいいのに)
タケシがバツイチでも年上でも結婚したいと言い出して、由美もその気になってしまった。
五月になっても話が進展しないとわかり、由美はタケシに「別れよう、もう待てない」と別れを切り出した途端に、それまで奥さんが来ている週末以外はタケシから電話かメールをしてきていたのが、ぱったりと途絶えた。
(なんだかなぁ、遊ばれただけかぁ)
タケシとのセックスは、それほど気持ちいいわけではなかった。由美がイク前にタケシは果ててしまうことがほとんどだった。
「もう、もう少し我慢してくれたらいけそうだったのにっ!」
「でも、気持ち良すぎるからさ」
それでも、由美が結婚を意識して、タケシも「結婚するんだから中に出していいよな」と生ハメするようになると以前より強いタケシへの由美の思い入れのせいか、たまにイクことがあった。
そんな失恋から一ヶ月後、由美は岡田透と出会った。
離婚の原因は夫の浮気。妊娠していた由美は、堕胎して慰謝料を請求した。医師の元旦那は、騒がれたくなかったのか浮気や由美が堕胎したことを母親には言わないでくれと泣きつき、まとまった金額を由美に渡してきた。
(……マザコン、最低)
その金は使わずにパートをして何とか暮らしていたが
、タケシとの交際費で半分近くは使ってしまった。
(もう残りのお金で、気晴らしをしてやるっ!)
由美は惚れたら負けだと自分に言い聞かせていた。
パートは辞めて、毎日パチンコを打つようになった。
この一週間、負けが続いていた。
(また仕事しなきゃダメかも、嫌だなぁ)
そんな時、SNSサイトでパチンコのブログを書いている他の主婦の女性から、実は負けが続くとたまに援交していると教えられた。
由美は出会い系の女性会員は無料のサイトに登録して何人かと会って遊んでみた。
(ホテル代は男が払ってくれるのね。うーん、簡単にお金もらえるし、パートを真面目にやってるなんて、給料が安すぎてやってられないわ)
パートでスーパーでレジ打ちをしているのと、援交で二時間ほどで二万円もらえるのでは援交のほうがはるかに楽にお金が稼げた。
四万円使って当たりを引けなかったので、由美は急いで適当に男性会員の年齢をみて、三十代の岡田透に決めた。正直、誰でもよかったのだが、岡田透がパチンコで負けた話を聞いてくれて、六万円をぽんと気前良く出してくれたので驚いた。
(これで明日もどうにか打てるなー)
由美が浴槽にお湯に使って明日、朝から打つ台を想像している間に、コンドームの交換が速やかに行われていた。
「おまたせ」
由美が部屋に戻ると岡田透が眠っていた。
(あ、なんか、この人の寝顔かわいいかも)
由美が隣に添い寝するように寝そべると、岡田透が目をさました。
「寝てたな、悪い」
「ううん、気にしないでいいよ」
岡田透が目をこすりながらシャワーを浴びに行った。
(なんか、待ってるのって緊張するかも)
岡田透が髪を拭きながらトランクス一枚で部屋に戻ってきた。
「ユミは明日も打ちに行くの?」
「なんで?」
「俺も明日、ユミが打ちに行くなら一緒にひさびさに朝から打ってみるかなって」
由美は「打ちたい機種とかあるの?」と笑顔で言う。元旦那も元セフレも由美とパチンコデートしたことがある。
「狙ってる機種あるのか?」
「あるある。でも、どっちにしようか迷ってて」
岡田透は携帯電話でパチンコ・スロットの機種情報が掲載されているサイトを開いた。
二人で確率や釘調整のみどころをチェックした。
由美はそうしていると少し胸が切なくなった。
「あのね、岡田さん……」
元旦那のことや元セフレの話をしているのを岡田透はうなずきながら聞いていた。
「岡田さん、なんか優しい感じだね」
「そうか?」
(なんかがっついてない。私の援交した人たちが、すごくがっついてただけなのかな?)
岡田透は由美が趣味やバツイチの過去を話してくれ、以外と早くなついてきた感じがした。
弥生もなついてくれるのは早かった。
(世の中、金しだいなんだろうな、やっぱり)
由美は岡田透の考えていることはわからないが、余裕がある態度に惚れぼれしてしまった。
「部屋、少し暗くしていいかな?」
「……うん、いいよ」
岡田透が照明の明るさを落として部屋を薄暗くした。