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こだわり
【フェチ/マニア 官能小説】

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女子大生-1

愛は金で買える。
そう言ったロックミューディシャンがいた。
岡田透はその意味はわからないが、金さえ与えればハイリスク、ハイリターンのギャンブルに挑む女たちがいるのを知った。

それまでは、仕事と遊ぶ金ほしさにパチンコに行って勝ったり負けたりしていて結局、時間ばかり過ぎてしまった。

岡田透は三十二歳。二十歳から十二年でそんな生活に陥っていた。ついていないことに二十五歳のとき、五年間勤めていた設計事務所が倒産した。

一年間ほど再就職までに時間がかかってしまった。さらに、以前の給料よりかなり少ない会社に契約社員という条件で妥協しなければもっと再就職には時間がかかっただろう。世の中は不景気だった。

再就職する間に岡田透は、金の切れ目が縁の切れ目という慣用句を痛感させられる失恋を体験した。
派遣アルバイトの日雇い仕事と就職活動を続けていた岡田透の彼女だった同僚の事務員は、岡田透が退職してから三ヶ月で「別れたい」とはっきり言った。

岡田透は新しいそれまでやっていた仕事とは全くちがう職業で半年もすると正直しんどくなっていた。

「岡田さん?」
「ああ、よろしく」
服装はシャツにノーネクタイ。腕時計と靴は高そう。金はそれなりに持ってそうだと思うが、平日の昼間に待ち合わせしたということは、普通のサラリーマンなのか、たまたま休日なのか、いまいち何の職業をしているかわからない。

出会い系サイトに岡田はいくつか登録していた。
岡田が警戒しているのはホテルに行って十五分から三十分で去っていく援交女である。

長谷部 弥生(はせがわ やよい)はハンドルネームは「ねこねこ」と登録している女子大生であった。
岡田透はハンドルネームも「岡田」である。
弥生は年齢をみて手当たりしだいに男性会員にサイトメールを送っていた。

男性は女性会員にメールを送るのにポイントがかかるが、女性会員は男性にメールを送っても無料。
男性は千円からまとめて三万円までポイントを購入することで、登録している女性会員のブログや登録している写真を閲覧したり、サイトメールを送信受信することができる。

(写真よりも若く見えるが顔もまあまあだな、痩せすぎでもないから抱き心地は良さそうだ)
岡田も弥生を観察していた。
目元だけ目隠し加工して下着姿でサイトに登録している女性たちは以外と多い。風俗嬢がプライベートで援交していることもある。

「ねこねこ、お昼は食べた?」
「岡田さんは?」
「コーヒー飲みたいかな。めしは食べた」
「私もごはんは食べました」
「じゃあ、デパートの中に行ってみるか」
「あ、はい……」

岡田は弥生がプロではないと判断した。
プロなら手軽に済ませて、他の男と会ってできるだけ稼ぎたいからだ。キャバクラ嬢らしくない服装や髪型も気に入った。出勤前に援交で稼ぐキャバクラ嬢はやらせないで物をねだるのがうまい。
人妻か学生、と岡田は推測した。

ブランド品や装飾品、化粧品など女性の興味がありそうなところを岡田は連れて歩く。
弥生は特に立ち寄りたいとは言わない。
そのままレストランが並ぶ階に到着する。

「おごるよ。ケーキとかも頼む?」
「でも……」
「ねこねこが食べるなら、俺も食べる。食べきれなければもらってやる」
「岡田さん、甘いもの好きなんですか?」
「ああ、好きだよ」
「じゃあ、ケーキセットで」

岡田は緊張している様子がない。
(遊びなれてる人なのかな?)
弥生はケーキを頬ばりながら考える。
「今日は時間あるかな?」
以前に夜に待ち合わせしてお酒を一緒に飲んで、ホテルで一泊することになった失敗を弥生は思い出した。
「夜七時ぐらいには帰りたいかも」
「わかった。そうしよう」

岡田はアイスコーヒーでケーキを流し込む。
(主婦じゃないな、旦那が帰るまでに帰宅するなら夕方までに帰りたがるはずだからな)

デパートを出て駅前でタクシーを拾う。
「ニューXXXXのあたりまで」
岡田は運転手に言うと窓の外を見ている弥生の表情を黙って見ていた。
弥生が携帯電話をいじっていないのを見て、あまり遊んでないのかと考えた。
駅前なのでそばにラブホがあるが、岡田はわざと駅前のラブホを使わなかった。
帰るのにタクシーを使わなければいけないという手間があることで、女が自分の好きなタイミングで帰りにくくするためだ。

岡田は弥生の手にそっとふれてみる。
弥生が手をひっこめてさわらないでほしいという感じか、そのまま手を握られても嫌がらないかを試しているのだ。
弥生は嫌がらない。
手を握り返してくるわけでもない。
嫌がったり、手を握り返してくる女たちはセックスの主導権を握りたがる傾向がある。

ホテルについて空き部屋を適当に岡田が選ぶ。
はしゃいでこの部屋あの部屋と言ってくるタイプではないようだと弥生の手を握り、エレベータで三階へ。
岡田はエレベータに乗ると弥生に抱きついて軽いキスをした。

「あ……」
弥生がキスされてぼおっとして小さな声を洩らした。
その表情を岡田は色っぽいと感じた。

部屋に入り明かりをつけた。
弥生がベットのはじに腰を下ろした。
岡田は備えつけのソファーに座って、財布から二万円を取り出した。
手招きして弥生に受け取らせる。

岡田はそのあと浴室に行き、浴槽にぬるめのお湯を入れておくと部屋に戻った。
弥生はまたベットに腰を下ろしている。

「煙草、喫ってもいいかな?」
「あ、どうぞ」
岡田が煙草を取り出して一服を始める。
その間に弥生が何をするか黙って観察している。


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