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女になった由美子
【その他 官能小説】

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女になった由美子-7

8.
「ユミ…、テレフォーン・コール・フォー・ユー」
 由美子はハットわれに帰って受話器を取った。

「由美子さん、僕だ」
「ああ、博さん」
「済まないね、中々時間が取れなくてね、日本に帰るときには必ず送っていくから」
「いいのよ、心配しなくて、・・」
「うん、何かあったら会社の方に電話して」
「ええ」
「じゃあ」

 短い電話であったが、博は毎日電話をかけてきた。

 博とのセントラル・コーストのデートから帰ってしばらくは、股間の異物感を、知らぬ顔をしてまっすぐ歩くのに苦労をした。一日二日と経つと、自然の摂理と言うか、薄紙を剥ぐように異物感は薄れた。異物感が消えると今度は博恋しさの想いが募った。

 人目を忍ぶ仲であれば、逢いたいときに逢うわけには行かない。土曜日の夜便で東京に帰ることが決まっており、博はその時は何としてでも送っていくからそれまでは我慢してくれと言っていた。
 その代わり、毎日五時になると、電話をかけてきた。

 由美子は気分が昂ぶると、博との逢う瀬を思い起こしては、一人でよがった。
 
 指先に触れるお小根や陰唇の質感が、以前に比べて格段に豊かに成熟しているのを感じた。
(やはり、女になると違うわ)
 博との僅か一夜の契りが、こんなにまで影響するとは思っていなかった。

 乳房や性器の性感が、以前に増して敏感になっているのを知った。
 博を想い、陰唇に指先が触れるだけで、バルトリン腺からお露が漏れた。
(赤ちゃんは、今はできないほうがいいわ。若し出来たら、しばらく博さんとは逢えなくなる)
 母親になる欲望を、女の欲望が凌いでしまった。

 いよいよ日本へ帰る日となり、博は夕方事務所に迎えに来た。
 博は夕方にならないと出られないと言うので、ホテルを朝のうちにチェックアウトすると事務所に出て、最後の仕事を片づけた。
 五時になると博はやってきた。


9.
 荷物を博の車に積み込むと、近くのイタリアン・レストランでパスタを前に、ワイン・グラスを傾けた。
 しばしの別れは、二人を無口にした。黙って手を取り合い、目を見詰め合った。

 日が落ちると、二人は車に乗り込んだ。
 車はシティーを横切ると、カテドラルの前を左に折れた。由美子には、博がどこへ行こうとしているか分かっていた。

 州立美術館の前を通り過ぎ、目の前にシドニー湾が開けてくる。既にバラバラと駐車している車の間に乗り入れると、車は軽く車止めにトンと当たって静止した。
 由美子には、一年前の光景が鮮明に思い出された。

 自分から仕掛けておきながら、初交の恐怖から、博の願いを拒絶してしまった。今又こうして、ビデオのプレイボタンを押したように、同じ光景が始まろうとしている。
 車から出ると、博が腕を取った。


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