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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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4.月は自ら光らない-8

 栃木の徹の部屋に入るとすぐに、机の上にノートパソコンが開き、書籍や書類が積まれているのが見えた。整理整頓ができる徹の机の上にしては違和感があり、明らかに「途中」という感じがしたから、紅美子を抱き寄せてくる徹にキスを焦らして詰問すると、月曜までに仕上げなければならない仕事がまだできていないことをあっさり吐いた。紅美子が帰ってから徹夜すれば間に合う、と言う徹を叱ってすぐに取り組ませた。手を抜いたらダメだからね、と事前に釘を刺された徹は、紅美子との時間を一秒でも長く持つために能力の全てを使って終わらせようとしている筈だ。その間に紅美子は夕飯の支度をするために買い物に出ていた。砂利が敷かれたアパート前の広場に自転車を停め、鉄階段を上る。買い物袋は重かったが、心地よい重さだった。
「おかえり。寒かったでしょ」
 ドアを開けると振り返って机から立った徹が、玄関先までやってきて、重い買い物袋を持ってくれる。
「……寒いっ、栃木」
 紅美子は手袋を外して両手を擦ったあと耳を温めた。すると徹が買い物袋を床に置き、紅美子の手をどかせて、両手で耳朶を包んでくれる。まだブーツを脱いでいない紅美子からよりも高い位置にある徹の体に両手を回すと、ちょうど胸のあたりに顔を埋めることができた。
「そこのキレイな奥さん、安いよー、って言われた」
「そりゃそうだよ。この辺りにクミちゃんみたいなキレイな人、いないから」
「……怒られるよ、栃木の人に」
 離れると片手を徹の腰に付いてニーハイブーツのサイドジッパーを下ろし、「まだかかりそう?」
 と問うた。普段そういうところをあまり見せない徹が少し渋い顔をして、
「だいたいできてるんだけど……、細かいところがまだ。詳しく突っ込まれると、説明できない」
 と言うのだから難航してるのだろう。紅美子は玄関へ上がって買い物袋を持つと、徹に回れ右をさせて机の方に押した。
「じゃ、頑張って。ムツカしいことは私は何にも分からないけど、ご飯作ることくらいはできる」
「だって、せっかくクミちゃん来てくれたのに……」
「言ったでしょ? 私、徹の仕事のジャマにはなりたくない」
 カウチソファにピーコートを脱ぎ、その下に着ていた白いセーターを腕まくりする。
「うん……。あ、台所の引き出しのところに、エプロン入ってる。この前買ったんだ」
「ハートのフリフリのエプロンだったらビックリするからね?」
 シンク下の引き出しを開けると、新品の水色のドット柄のエプロンが入っていた。ビニールを破いて広げてみる。Aラインの裾が可愛らし過ぎるように思ったが、
「ま、徹にしては趣味いいじゃん」
 と言って首にかけると髪を外に出し、捻りながらバッグの中のヘアクリップを探した。「……徹が手こずってるなんて、珍しいね。学校の勉強も、何でもチョイチョイ、ってやっちゃってたのに」
「うん……。この前、研究グループが変わったんだけど、そこのリーダーの人、成果物に対するチェックが厳しいんだ」
「へー……、まさかイジメられてるの?」
「そんなことないよ。指摘は的確だし、俺なんかよりずっと専門知識があるし、スゴい人だよ。厳しいけど、そういう人の方がきっと勉強になる」
「ドMの徹らしいね」紅美子は笑いながら、腰の紐を後ろに結んで姿見で左右後ろを確認した。「……ね、なんかミニにエプロンってエロくない? 下、何も着てないように見える」
 徹の方へ、腰に両手をあて、片脚の膝を内側に向けた爪先立ちになってみせた。徹のために履いてきた黒いタイトなミニスカートは、紅美子の太ももを半分以上見せるものだったから、エプロンの裾よりも短く、その影に全て隠れてしまう。
「……。……そんなこと無いよ、可愛い」
「なんか、変な間があったけど?」
「ごめん。……本当はちょっとヤラしい」
「徹って、こういうの好き? ……じゃ、裸エプロンにしてあげよっか?」
「そんなことされたら集中できないよ」
 徹が曖昧に笑った。まんざらでもないようだったから、
「お尻出して料理しちゃダメだよねー。でも」
 紅美子はからかうように、「してほしいんなら、してあげてもいいよ。結婚してから、徹が帰ってきて、私が裸エプロンで迎えるの。ご飯にする? お風呂にする? それともー、みたいな」
「……」
「徹なら一択だ」
「うん……」
「……ほら、仕事は? 集中して」
「休憩……」
「じゃ、休憩しててください」
 紅美子は徹に背を向けて台所へ向かうと、スーパーの袋の中から買ったものを取り出し始める。すると背後に気配を感じて、エプロンの上から腰を抱かれ体を密着させてきた。
「……ま、来るって思ってたんだ」
 背後を見ずに紅美子が呟く。
「だって」
「ガマンできない?」
「できない」
 ヒップに徹の硬い突起が押しあてられている。
「……一回出したら、集中できる?」
「うん」
「ホント?」
「うん」
「じゃ」紅美子は身を反転させて、徹の上唇をはみ、「しょうがない」
「んっ……」


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