4.月は自ら光らない-18
「結婚して、おばちゃんやおばあちゃんになってもそう呼ぶの?」
「もちろん」
「……紅美子って呼んでみて……?」
「ク……」徹は生唾を飲み込んだ。「くみ、……こ……」
「えーっ、私ってそんな緊張するほどコワい?」紅美子は長い髪を頭の両側で手に持って、「こうやってツインテールにしてあげた方がよかった?」
「そ、そういう問題じゃない」
「どういう問題?」
「……、……、く、紅美子……」
「はいっ、ご主人さまっ……。……ヤバい、すっごくきゅーんとする。もう一回」
「紅美子……」
「んっ……。何ですか、ご主人さま……」と言って紅美子は徹の首に絡みついて額を擦り付けた。「……名前で呼ばれると濡れちゃいます、ご主人さま」
徹に呼び捨てにされたことは、数えることもできないほど記憶にない。紅美子は本当にスカートの中を甘く震わせて蜜を漏らしていた。
「してほしい……」
「何をですか、ご主人さま」
「く、口で……」
「うん……、あ、ちがった。はい……」
紅美子に覆いかぶさるようにしていた徹が起き上がると紅美子も身を起こした。ソファに深く座らせて脚を広げさせると、その間の床に膝を付いて座った。ジーンズの前を開けてみると、ブリーフに形が浮き出るほどに勃起して、膨らみの先に漏らしてしまった先走りが滲んでいた。唇を近づけると鼻腔に精の匂いが漂ってきて、胸を震わせて伸ばした舌で下着の上から舐めてみる。徹が脚をヒクつかせ、熱い溜息を漏らした。布地へ唾液を染みこませるようにして、先端、幹、そして顔を差し入れるようにして下方の柔らかい袋にまで吸い付く。
「……んっ、気持ちいいですか……? ご主人さま」
「んっく、ふっ……、気持ちいいよ……」
さすがにメイド役を演じてフェラチオをしている顔を見られるのは恥ずかしくて股間に顔を埋めたまま、
「……もっと命令していいよ」
と小声で言った。
「め、命令……?」
「そ。ご主人様でしょ」
紅美子は唾液を湛えた舌を、ブリーフに浮き出ている男茎に沿ってゆっくりと下から上へと舐め上げた。上端まで達すると、口内に溜まった唾液をジュッと布地に染み込ませ、「そんな頼りないご主人様と結婚するのやだ」
紅美子の唾液と漏らした先走りで大きなシミを作っているブリーフの、腰ゴムから飛び出しそうになっている亀頭に吸い付いて、唇の中で舌先で細かく凹みを擽ると、紅美子が乗り掛かっているのに、徹の腰が激しく突き上がって痙攣した。
「ううっ……、ク、クミちゃん……」
「ん? 誰、それ?」
「……く、紅美子。直接、して」
「『しゃぶれ』って命令してみて」
自分で言って鼓動が高鳴る。暫く頭上から荒い息が聞こえた。
「く、紅美子……。ちょ、直接、しゃぶっ……て」
徹の言葉に息が詰まりそうになりながら、腰ゴムを下ろすとグイッと突き出てくる男茎に先端からしゃぶりついた。口の中で舌を細やかに動かし、唾液を滲ませて吸い付いて頭を上下させる。シャワーを浴びていないから味が濃い。時々口から出して裏に通った一本の筋を舐め上げると、鼻先に熱い肉肌が触れて妖しい期待が増してくる。
「あっ、ク……、クミ……、く、紅美子……」
「はい……」
「出る……」
「……出して。とお……、ご、ご主人さまのしたいようにして」
「ううっ……!」
やおら徹が身を起こすと、股間に覆いかぶさっていた紅美子の肩を掴んで、跪いた背を伸ばさせると、中腰で根元を握り、カチューシャの上から髪を梳き、頭を掴んでくる。眉の辺りに亀頭の先端が触れて、熱くヌメった感触があった。
「んっ……、欲しい。ちょうだいっ……」
「んあっ……、紅美子っ……、紅美子っ!!」
徹は紅美子の眉に亀頭を触れさせたまま思い切り射精をしてきた。驚くほど熱い粘液が顔に弾けると、目元や鼻筋へドロドロと垂れ落ちてくる。鼻先から息を吸い込み、徹の欲情が鼻腔いっぱいに広がってくる。いつもより脈動が続いて、発射に何度も顔を叩かれた。上唇に垂れてくる精液を、無意識の内に口を軽く開いて、舌先で味わってしまう。
「すっごい……。やっぱり、メイドさん姿の方が興奮するの? いつもの私より」
苦笑いして紅美子はすぐ側のテーブルの上にあったティッシュを取って目元の精液を拭い、何とか目を開けて徹を見た。恍惚とした表情をしている。
「違うよぉっ……、ク、クミちゃんの名前呼んだから……」