3.広がる沙漠-14
指先を埋めてクルクルと広げていきながら、よろめく紅美子を支えつつ腰を浮かせると、いままで井上が座っていた場所に座らされる。紅美子が腰を下ろすに従って、指が深く内部に入り込んできて身が仰け反った。脳髄を襲ってきた鮮烈な性感が引いていくと、待っているのに体内の指が一向に動いてくれないのを不思議に思って薄目を開けて井上を窺うと、背筋を伸ばし突き出したバストの先端で固く尖っている乳首に唇を近づけてくるところだった。
「ここ、痛かった?」
「……ヒリヒリする。ここだけ強く触りすぎ……」
紅美子が言うと、井上が乳暈へ唇を吸い付け、痛みを癒やすように舌を這わせてくる。紅美子は高い吐息を漏らしながら腰をモゾモゾと動かして蜜壺の指を抱きしめた。素早く動く舌が屹立した乳首を震わせて弾いてくると、痛みが緩和され、もげ落ちてしまいそうなもどかしい疼きを広がり、紅美子は後ろ手を付いた岩肌を鷲掴んで、
「中……。どうして……?」
と甘ったるい声で訊いた。
「こうしといてやるから」井上は差し入れた指を強く固定し、もう一方の手で紅美子の片脚を湯船の縁に上げさせた。「自分で動いていい」
「恥しいことばっかりさせようとする……」
そう漏らして唇を噛むと、紅美子はおずおずと腰を前に突き出した。押し出すほどに指が内部を擦ってくる。腰を引いてみると同じく襞面から夥しい快楽が下腹へもたらされてくる。一度動かしてそれを知ってしまっては、もう止まらなかった。紅美子は足の裏を岩縁について、はしたないと分かっていながら何度も腰を前後させていく。不意に第一関節が曲がり、二本の指先が紅美子が最も敏しい上壁へ押し付けられると、紅美子は自ら腰を進めて、舌足らずな悲鳴を岩壁に響かせた。
「声を出さないでくれ」
井上が首筋に唇を這わせて囁く。「外に聞こえる。……誰にも聞かせたくない」
「む、無理……」
「ガマンするんだ」首筋に唇が軽く吸い付く。「そんなに声を出されたら、キスマークをつけたくなる」
「だ、……だめっ」
「なら、ガマンしろ」
「んんっ……」
指先にクッと力が込められ催促してくると、紅美子は唇を固く閉じ、小鼻を膨らませて震える息を漏らしながら上壁へ当たるように腰をくねらせた。水滴が撥ねる音に混じって、紅美子の下腹部から潤面がこすれ合う淫らな音がする。体が求めるまま、その音を聞きながら淫靡に腰を動かしていた紅美子がふと動きを緩め、眼を閉じて小さく言った。
「……ちょ、ちょっとだけ、休ませて」
「どうした?」
「トイレ……」
顔を覗き込まれる気配がして、頬が熱くなった。腰を止めてしまった紅美子の脚の間で微動だにしてこなかった指が動いた。しかしそれは埋められた中指と薬指ではない。親指の腹が、柔門を割って突き入れられている入口のすぐ上の、小さな排泄口を擽ってくる。
「ちょ……」
井上の首筋に額を押し付けて呻いた。擽られて緩みそうになる小孔を絞めて首を細かく振る。
「していい、ここで」
「や、やだよ、絶対……」
「徹くんには見せたことある?」
「あ、あるわけないでしょっ……」
「じゃ、なおさらだ」親指で擽りながら、中指と薬指が内部で擦り合わされ、微か過ぎて焦れったく襞面が弾かれる。「見たい」
「イヤ……、できない」
懇願を滲ませた潤んだ瞳で見上げる紅美子を、あの眼が冷徹に見下ろしていた。「かかっちゃう……」
「かまわない。どうせ風呂だ」
「だめっ」さっきより強くかぶりを振る紅美子だったが、井上の言葉に心の中の隙を突かれて、それが一気に下肢へ広がって妖しい誘惑が襲ってくる。「待って。本当に、出ちゃう……」
「いい」
擽っていた親指には、尿道口を塞いでいる意味もあった。その指が離され、腕を前後させて二本指が緩やかに蜜壺をピストンしてくる。
「んんっ!」
焦れていた内襞が再び摩すられ始めると、緩んだ小さな口からチョロッ、チョロッとしぶきがあがり、やがて一本の奔流となって流れ出し始めた。溜めていた液汁が放たれる開放感と、それを男に見られているという恥辱に包まれ、放尿の先が井上の体を叩いているのが見えると得も言われぬ騒めきが胸を満たして、排泄中にも関わらず雫を指先に迸らせた。一度流れ出した奔流は紅美子が思っているよりも長く続いた。
全て流し出した紅美子が、ああ、と声を漏らし、
「……キスして。おかしくなる……、狂う」
と囁いてねだると、井上は言葉が終わる前に唇を押し付け、紅美子は後ろ手についていた手を首に絡めた。身が起こされ、放尿中も入りっぱなしだった指が深くまで届いてくる。
「まだ、さっきのあんたの……、口の中に……、……少し……残ってるんだから」
糸を引いて絡め合った唾液を顎から落としながら、紅美子は合間合間で教えてやる。しかしそれにも構わず井上は激情に満ちたキスを紅美子へ与えてくる。
「かまわない。……キスして欲しかったんだろ?」
「……ん……」