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爛れる月面
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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2.湿りの海-4

 井上の指先がストッキングの最深部まで到達し、下着のクロッチを押し上げると、紅美子のタイトスカートの腰が戦慄いた。恋人ではない指の感触。嫌悪感がスカートの中に充満してくる。「触らないでっ……。いやだっ……」
「どうした? 昨日はあんなに悦んでたくせに」
「そんなわけっ、ないでしょっ……」
「……だから、君は本心からそう言えるのか?」
 井上の爪の先が、柔らかな丘を軽く引っ掻くように巧みに撫でてくる。ただ否定してくるよりも、紅美子の内心に訴える言い方が憎らしく、そして紅美子を苦しませた。
「夢……。夢だし。徹とする夢を見ていたから」
 そうだ。そうとしか考えられない。「あんたなんかにされて、なったわけじゃないっ……!」
「そうか。エロい夢を見てたから濡らしてしまったんだな」
 井上の中指がスカートの中で巧みに紅美子の雛先を捉えて集中的に、そして陰湿に擽ってきた。抑える手に力を入れて引かせようとするがビクともしない。「じゃ、今は夢は見ていないんだから濡らすわけないね?」
「離してっ……」
 紅美子の性感が集中する場所の一つが井上に弄られてくると、どれだけ紅美子が拒んでも昨晩の感覚が呼び覚まされてくる。それは夢の中で見た恋人の愛撫ではなかった。ホテルのベッドの上で自由を奪われて思うがままに体を侵してきた玩弄者の感触の方だ。夢から醒めても、何度も奥から雫を噴き出した、その記憶が紅美子の頭の中に確かにあった。
「……思い出してきたようだね?」
 指が雛先に強く押し当てられると、既に紅美子が崩落してしまう攻め方を熟知しているのだと、まるで紅美子に思い知らせるように弾いてくる。
「昨日……」耳元に唇が寄せられて囁かれる。「キスしてやったじゃないか、ここ」
 その言葉に、大きく脚を開かされて唇で吸われ、舌で攻め立てられた時の感覚が、拒めば拒むほど、もどかしいほどに卑劣に渦巻いてくる。体の奥が震え、動きそうになる。そんなわけない。頻りにそう言い聞かせても、奥からこみ上げる衝撞は収まらなかった。井上が脚の間に大腿をこじ入れて開かせると、無防備に開かれた場所に更に執拗な愛撫が加えられてくる。
(いやだっ……。そんなわけないっ。そんなんじゃないっ……!)
 遂に紅美子の腰が前後に跳ねたかと思うと、奥から雫が漏れだしてきた。奥歯を噛んで押しとどめようと下腹部に力を入れるが、爪先で性感が鬱勃するクリトリスを弾かれては、留めようとしていただけに、崩されるとより多くの雫を漏らしてしまう。
「やめ……、やめてっ!」
 このままでは屈辱と自己嫌悪に気が狂ってしまう。そう思った紅美子は男の両手の爪を思い切り立てて力いっぱい押し返した。男の指が止まる。それは力で押しとどめたのではなく、紅美子の反応に井上が自分から動きを止めたに過ぎなかった。
「……こんなところで大きな声を出して誰かに聞かれたらどうするんだ?」
「っ……、誰か来たら大声出してやる」
「だから、すればいい、って何度言わせるんだ?」
 スカートの中から手を抜き取った井上は、余裕たっぷりの表情を崩さぬまま、「君がこんな所で触られて濡らしていたのがバレるだけだ」
「誰がそんなっ……」
 と言ったが、クリトリスを弄ばれて奥から溢れた蜜はもう薄布に向かって垂れ落ちているに違いなかった。中途半端に捲れて紅美子の麗しい太ももを晒しているタイトスカートを下ろそうと両手を差し向けた瞬間、井上が目の前にしゃがみ込み、紅美子の両手を捉えて逆に捲りあげようとしてくる。
「イヤッ……! 何すんのよっ!」
 携帯も足元に落として必死に抵抗するが、井上の力は容赦がなかった。タイトスカートの裾は更に捲られて、ストッキングに包まれた紅美子の下腹部が晒されてしまう。しかも目の前に井上の眼差しがあった。
「何だ? このシミは」
 両手を脚の付け根に向けて隠そうとしたが手首を掴まれる。どれだけピッタリと脚を閉じ合わせても、ベージュのストッキングの中で、紅美子の白いショーツの膨らみの前が色濃くなっていることを隠しおおせなかった。
「……」
「……っていう女ってことだろ? 夢は見てなかったよな?」
 真下から残酷な視線で見上げられると、紅美子は長い髪を垂らして俯いた。睫毛からポタリと涙が落ちる。泣いてはいけない。こんな奴に屈したことになる。唇を噛んで涙を堪えているところへ、井上の両手がストッキングの腰を掴み、ショーツと一緒にスルスルと膝まで下ろしてきた。
「ううっ……」
 トイレの個室で下腹部を露わにされる羞しめに遭うなど、昨日までは考えられないことだった。滑らかな秘丘に息づくヘアに視線をひしひしと感じて呻く紅美子に向かって、
「改めて見ると本当にイヤラしいな、君のココは」
 と言いながら、井上は更に半歩左右に脚を開かせて下から覗きこんでくる。
「見ないで……」
 紅美子の命令口調が懇願に崩れると、井上は髭の端をクッと上げ、親指で蜜を含んだ奥の毛並みを指で撫でる。 「手入れしなくてもキレイな形はしているが、この両側にまで生えているのが特にイヤラしいな」
 入口の両側の薄毛にまで親指が触れてくると、紅美子は壁を背に立ったまま小さく足踏みをした。
「思いっきりここで犯してやりたいが……、そろそろ時間だ」


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