発覚2-3
一度だけ利用したことがあるこのホテルにはSMの道具を展示した部屋がある。空室はあったが田倉はここを選んだ。室内はモノトーン調の内装で妖しい雰囲気を醸し出している。アンデレ十字のようなエックス型の罰当たりなものが黒い壁に設置してある。拘束するチェーンは樹脂製だった。横につるしてある鞭も叩く部分が柔らかく、ふにゃふにゃしている。これで叩いても痛くはない。安全性を重視するとこうなるのだろう。
それにしても、ずらりと並んだディルドは圧巻だ。自分のものとは比べものにならないあの巨大なディルドもある。あれで責めたらどうなるだろう。今以上に乱れ狂う姿を想像しながら奈津子の尻に腰を叩きつけていた。
広々とした浴室に置いてあるマットレスの上で、体中をローションまみれにして一回抱いている。二穴を――特に褐色の蕾を――執拗にいじめた後だったので反応は過敏だった。
相反し田倉はこうして激しくピストンさせていないと、膣の中でたちまち柔らかくなってしまう。この部屋を選んだのも何らかの刺激が欲しかったからだ。萎えと勃起を繰り返しながら二回目を苦戦していた。それでも何とか射精までこぎつける。コンドームをかぶせていないペニスを慌てて引き抜いた。お互いの腹の間にはさみ込み緊張を解く。ほんの少ししか出ず、たちまち萎えた。セックスとはいかに精神的な充足感を要するかを思い知った。
シャワー室から戻った奈津子に真実を告げた。動揺する奈津子を抱きとめようとしたが小さく拒否した。もっとうろたえると思っていた。もしかしたら近い将来こんなことになるのでは、と考えていたのだろうか。深刻そうだが諦念の表情。楽観的な考えを持つ田倉とは、その辺りの温度差はずっと感じていた。発覚したとしても田倉が失うのは信頼ぐらいだが年頃の娘がいる奈津子が失うものは大きい。社員が知るのは時間の問題だろう。沼田が黙っているわけがない。奈津子とはもう逢えないのだろうか。そのことを口にすることはできなかった。今日はなぜ抱いたのかと責めることもなかった。