1.違う空を見ている-4
紅美子の姿と言葉に、徹が感涙を流しそうに顔を震わせて、熱っぽい視線を素肌に浴びせてくる。肌に感じる感覚に紅美子も陶然となりながら、
「……ね、してみて?」
と言った。
「何を?」
「私と離れてた間、私を使って自分でしてたんでしょ?」極彩色に彩られた爪先で徹の頬を軽くなぞる。「徹が自分でしてるとこ見たことない」
「恥しいよ」
「見たいの」
紅美子にそう言われると、徹は跨がられたまま、慌てて上手く動かない手でズボンの前を開けた。
開いたジッパーの間から、下着の前穴をくぐって男茎が取り出される。血管が浮くほどに張り切ったその先端からは、透明の汁が大量に溢れ、亀頭の表面をコーティングして照っていた。
「すごいね。いつもより勃ってる気する」
「だって、本物のクミちゃんがそばに居たらこうなっちゃうよ。久しぶりだもん」
「私がそばに居たらこうなっちゃうの? じゃ、二人で外歩いてたら、勃っちゃうじゃん」と言ってから、耳元に顔を寄せて、「変態」
「んっ……、クミちゃんと一緒に歩く時はガマンしてるんだ」
「ガマンしてんだ。エライね。……ね、早く見せて。徹がしてるとこ」
紅美子が言うと、徹は何とも言えない声を漏らして、男茎を握りしめた。その場所に紅美子の視線をひしひしと浴びてゆっくり動かすと、僅かに擦れただけでも、亀頭の中心から更に透明な雫が漏れ出してくる。
「そんなふうにしてんだ」
「うん……。んっくっ……!」
「今どんなこと想像してんの?」
「目の前のクミちゃんしか見えない……」
その言葉に紅美子はショーツに向かって蜜が零れ落ちるのを自覚しながら、
「私が居ない時、今みたいにしてもらうの想像してるんでしょ? このソファ買ったのもそのため?」
と、自慰を続けている徹をジッと見据える。
「んっ……、あっ……、そ、そう。ど、どうして分かるの……?」
「変態」
「んんっ……、ごめんっ……」
謝りながらも紅美子に貶された瞬間、ポロシャツに向かって透明な粘液が勢いよく飛んだ。亀頭の首周りに垂れてくるヌメりを指にまとわせて扱くと、ヌチュッと音が立つ。
「何か飛んだよ?」
「あうっ……、だ、だって」
「私のこと見て、そんなにエッチになってんの?」
肩から手を話した紅美子は、背を反らして引き締まったクビレを見せつけながら両手で自分の腰骨から胸元をなぞりあげて、「こんなの着て欲しいなんて、ほんと、変態」
徹が頼んだわけではなく、どんな下着が似合うと思うか、その趣好を聞き出していた紅美子が勝手に自分で着て来たのだった。だが、
「ううっ、ご、ごめん……。でも、すごく、すっごくキレイ……」
何故か徹が謝って、謝りながらも手首を動かすスピードが速くなっていく。
「ね、最後までして?」
「……だ、出すの?」
「そう」
紅美子は粘液が擦れ撥ねる音を立てる徹の股間と、融け落ちそうな顔を交互に見ながら頷いた。
「だって、……クミちゃんと」
「だめ。して」
「んんっ、クミちゃんっ……」
躊躇しているわりには手は止まらなかった。紅美子の命ずる眼色に操られるように、徹は男茎を扱く手を限界まで速めていく。
「ほら、見せて、徹が出すとこ。見ててあげる、全部」
紅美子は自分の体を、今度は上から下になぞると、ショーツの紐から指を離し、そのすぐ前で音を立てている男茎の、徹が最も弱い亀頭の裏側へ爪を僅かに立てて震わせた。
「うああっ!」
「だめ、徹。目閉じないで。私を見て」
徹は爪の先で急所を弄られて脳天まで突き抜けるゾッとした感覚のせいで閉じ落ちてくる瞼を必死に開け、
「ああっ、クミちゃん!!」
叫ぶと、遂に亀頭の先から悦びの樹液が飛び出してきた。
「……徹っ、スゴい……」
紅美子が思わず漏らしたのも無理はなく、徹が放った精液は目線の高さまで噴き上がって、反り返った男茎の噴射口のせいで徹自身へと降り注いでいった。分離した透明な汁の細かいしぶきを飛び散らせながら、四回、五回となってもその勢いは衰えなかった。紅美子も初めて見る徹の射精姿がやっと収束を迎えると、彼のポロシャツには何筋もの精液が飛んだ跡が染み込み、そして何より徹の頬まで飛んで首筋へ垂れ落ちていた。
「……こんなに出したの初めてだね。どうして?」
紅美子は徹に覆いかぶさって、両肩を抱いて耳穴を舌で穿りながら囁いた。
「クミちゃんが……、すっごいキレイだから。だって、想像じゃなく、本物だもの」