1.違う空を見ている-29
泣き叫ぶ紅美子を愉しむように笑った井上は、掴んでいた肩を抑えて紅美子の体を固めさせると、腰を前に押し込んで亀頭を紅美子の中に埋めてきた。それだけで紅美子はまるで磔られた身が刑吏に貫かれたかのように高く長い悲鳴を上げた。徹ですらずっと自制して守ってきてくれた場所が、悍ましい劣欲に塗れた男茎で直接姦されていく。
「抜いて……、お願い。抜いてっ!」
うわ言のように繰り返す紅美子に向かって、
「なんだ、ナマは初めてだったか?」
と言って、井上が内壁を擦って更に亀頭を奥へ進めてくる。「彼氏より先に直接ココを犯すことができるなんて光栄だ。じゃ、こんな熱く濡れてギュウギュウ締め付けてくる君のオマンコの感触は、彼はまだ知らないわけだ。じゃ、最後まで入れるぞ?」
「やめ……、やだ……、と、とお……」
名を呼び切る前に井上の亀頭が最奥まで到達して、更に体を押し上げると紅美子の絶叫が部屋に響いた。井上は奥まで埋めたまま、手のひらで紅美子のバストを捏ねるように揉み、更に身を伏せて至近距離で顔を覗きこんでくる。
「……どうだい? 初めてのナマの感触は」
「……」
何も答えることができない。何も答える気になれなかった。
「聞いてるんだよ? 初めて浮気した感想を」
浮気、という言葉を聞かされて、紅美子は瞳を開いて井上を見返し、
「死んで……。殺してやる……」
と絞りだすように言った。その表情を見て嬉しそうに笑った井上は、
「いい顔だな……。やっぱり君は犯しがいがある。最高の女だ」
と言うと、紅美子の顔へ近づいたまま腰を引き始めた。
「……いや……」
性交が始まる予兆に慄きながら紅美子が固く目を閉じた瞬間、一気に男茎が紅美子の内部を擦りながら最奥へ打ち付けられる。
「あぐっ!!」
海老反りになった紅美子の体からまた男茎がゆっくり引かれて、間髪入れず二回目の打突が加えられる。僅かに弛緩してもすぐに全身が締め付けられるような打突で身を凍らされながら、徐々に挿抜の間隔が狭められてくる。
「ほら……、どうだ? ん?」
姦してくる井上にずっと顔を見つめられる。悲嘆も絶望もこの男に見せることができずに、紅美子は唇を結んでも漏れてしまう高い喘ぎを聞かせ続けていた。
「君ほどの女が、こんな悦びを知らずにいるなんて、もったいないだろ? ……僕がちゃんと、教えてやるからな……」
井上もさすがに息が乱れ始める。
「だ、誰が……、うあっ!!」
抵抗の言葉をぶつけようと、結んでいた唇を開いたタイミングを見計らって、巧みな腰使いでそれまでとは違った角度で男茎に抉られると、その声は甘声に変えられてしまう。
「くく……、次々溢れてくるじゃないか。よっぽど、ナマが気に入ったか?」
「……くそ、……死ねっ……、あうっ!」
角度が変わった男茎の先が、さっき初めて指で玩弄された場所を押し上げてきた。指とは異なる感触は嫌悪と快楽を同時に引き起こして紅美子の体を追い込んでいく。 「いやっ……、もうやだ……」
井上は紅美子の襞が震えながらも強く引き締まって痙攣してくるのを感じ取ると、
「……ほら、イキそうなんだろ? ……遠慮しなくていい」
と言ってくる。低く響く声はまるで催眠でもかけてくるかのようだった。
「……そんなわけない……」
「くく……、どうした? そんなこと言って、オマンコはもう限界みたいだぞ?」
精神力で抵抗する紅美子を崩しに、亀頭のエラが至る所に擦れるよう腰を操ってきた。
「ううっ……! いやだ……、こんな……。徹とじゃなきゃいやだっ! 徹っ! ……徹ぅっ!!」
徹とのセックスでは一度も絶頂を味わったことがなかった。それでもいい、と思っていた。いつか徹が溢れる愛で導いてくれると思っていた。それまでは、徹の愛に包まれていることが、絶頂以上の悦びの筈だった。
「そら……、イケばいいじゃないか。徹くんはここまでしてくれなかったんだろ? わかるよ、君の反応を見ていると」
「やだ……、やめて……、止まって、お願いっ……」
しかし井上が息を弾ませながら貫き続けると、瞳を閉じて身を固く縮ませた紅美子はそのまま全身を痺れさせて遂に絶頂を迎えていた――迎えてしまった。
「……スゴいじゃないか。どうだ? 最高だろ? 彼氏以外とのセックスは」
そう言いながら井上はまだ敏感な内部を執拗に擦りあげてくる。
「あうっ……」
身を固くしたらいいのか、緩ませればいいのか、初めての絶頂のために井上の攻めを緩和する術がわからずに体を震わせた紅美子は涙声で、「も、もう、……終って……」
「……、くっ……、たしかに、もっと犯してやりたいが……」井上が呼気が乱れるのに呼応して、紅美子の中で男茎が収縮して蠕動しているのが伝わってきた。「イク時の君の中がスゴすぎてね……。全く最高のカラダだよ」
「ちょっ……、ねぇ、ウソ……、やめてっ!」