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ありがちな二人の、ありがちな日々
【女性向け 官能小説】

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月光と、陽光 -2


ダイニングに置いてある電機ケトルのスイッチを入れて、湯を沸かしながら白と黒、二つのマグカップにインスタントコーヒーの粉を入れて湊の後ろ姿を眺める。

左頬杖をつき、右手でマウスを動かしパソコンを閉じる動作を取る。その背中は新太には少し寂しげに見えた。

湯が沸き、マグカップにそれを注ぎ入れると心が安らぐ香りがダイニングに立ちこめ、湊は深く息を吐いた。

「お待たせ」
「ありがとう」

小さな笑みと短い言葉を交わし、二人向かい合わせに座り、静かにコーヒーを飲み、息を吐いて、

「書くって大変…?」

新太は、湊に一言尋ねた。

「…そうね。大変かも…」

湊は小さく苦笑いして呟くようにそう答えた。

「幼い頃は、夢中になって自分の好きな世界を想像して書く事ができたけど、今は想像の世界を書く事にどこか怖さを感じてる自分がいるのよね…」

「創造とは、喜びと悲しみという相反した感情を基に生まれるものだって、僕は思ってる」

新太は、

「自分が心から望む世界を描く事って、とても勇気のいる行為だよね? その行為に臨む時に何が一番怖いかって考えたら、やっぱり僕は自分自身が一番怖い」

そう言って、黒いマグカップに視線を落として、

「僕は、名前だけ一人歩きして、感情の無いものを、僕が宿らないものを描いた僕が許せなかった…。湊サンにはそんな思いはして欲しくない」

「新太…」

「湊サンには、自分を、自分の世界を否定する事はして欲しくない」

新太は、真っ直ぐに湊に視線を向けて、

「僕は湊サンとこうして一緒にいる時間を獲た事で、また描く僕を好きになろうと思ったよ。だから鉛筆を握ったんだ。そして、僕が一番描きたい絵を描いてる」

ゆっくりと穏やかに笑んで、

「湊サンも、一番書きたい物語を、心から望む世界を書いて僕に読ませて欲しいな」

湊の手をそっと握った。

「ありがとう…」

照れくさそうに、湊は小さく呟いて、

「私も、新太とこうして一緒に過ごす時間の中で、また書きたいって気持ちが膨らんだの。だから、ありがとう」

新太の手をそっと握り返した。

「…もうだめだ」

「え…?」

「…なるべく執筆の邪魔しないようにって思ってたけど、もう、我慢できないよ…」

新太は、立ち上がり、

「ちょっ――!!」

湊を抱き抱えて、

「長丁場の作業は、栄養補給が大事だよね?」

ソファーにゆっくりと湊を寝かせ下ろした。

「ずっと湊サンを見つめて絵を描いてたら、見つめるだけじゃ足りなくなっちゃった…」

「んっ…」

新太は、湊の唇を啄みながら、

「湊サン、柔らかくてあったかい…」

「ぁ…、んぁ……」

キャミソールをたくしあげ、しっとりとした柔らかな胸を手に包み、せつなげな息を吐いた。



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