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下町の恋
【幼馴染 官能小説】

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下町の恋-5

9.
 家に戻ると芳樹は、妹の智恵子に事の次第を話して、協力を頼んだ。二人の結婚を望んでいた智恵子は、全面的な協力を約束した。
 とりあえず、鈴世との連絡は智恵子に任せることにした。
 
 しばらくして、鈴世から夫の様子がおかしい、浮気をしているらしいと伝えてきた。
 芳樹は、興信所に依頼をして夫の調査をすると、会社の女性としばしばホテルに出入りしていることが、写真を添えて報告されてきた。妻とのセックスができないので、会社の女性に手を出したらしい。

 このことを鈴世に伝え、夫に、子供の親権と引き換えに、慰謝料や財産の分与を求めないことを条件に離婚を求めさせた。すでに新しい女に気を奪われている夫は、すんなり離婚届に判を押した。

 離婚が確定したことで、芳樹は、次の行動に出た。

 まず、妹に言い含めて、鈴世が離婚をして子連れで戻ってくること、この子は、実は芳樹の子種だったことを、スーパーでおばさん達に耳打ちした。
 噂は、あっという間に町内に流れた。
 
 前には、母親の反対で結婚できなかった町内のロミオとジュリエットが、今度こそ結婚をするに違いないと、おばさん達の期待が膨らんだ。

 頃合を見計らって、芳樹は両親の前に手を突いた。
 すでに噂話で状況を知っている両親も、お前がよければそれでいいよということで、難なく了解してくれた。
 母親は、早く孫の顔を見たいとまで言いいだす始末で、芳樹は面映かった。

 十月十日の日が満ちて、鈴世は無事女児を出産、実家に戻ってきた。芳樹は改めて鈴世の家に父親と兄夫婦を訪ね、鈴世との結婚を申し込んだ。

10. 
 浅草寺のほおずき市がやってきた。芳樹は鈴世を誘って、浅草寺に出かけた。
 赤子を胸に抱いた芳樹、浴衣姿の二人の姿は、誰が見ても仲睦まじい若夫婦。
 観音様の本堂で、賽銭を投げて3人の幸せを祈る。

「疲れたかい」
「ううん、大丈夫よ」
「一寸これから、家を見に行こう」
「えっ、家って?」
「親父が頭金を出してくれたんで、近くにマンションを買ったんだ」
「それって、私たちの家?」
「気に入ってくれると嬉しいけれど」

 タクシーを飛ばして、吾妻橋を渡る。

 芳樹の実家から程近いブロックの、隅田川沿いに建つ5階建てのマンション、3階にその2LDKの部屋はあった。
 窓から、墨田の流れと、その向こうに浅草寺の屋根が見える。

「相談してからと思ったけれど、早く落ち着きたいんで勝手に決めしまった」
「嬉しい」鈴世が涙ぐむ。
 和室の畳の香りが、新婚生活の始まりを祝っているようだ。
 ベビーベッドに赤子を寝かせて、二人は抱き合った。待ちに待った幸せが、着実に現実のものになっていく。

「スウちゃん、いいかな」
 芳樹が、鈴世を抱きしめた。
「もう、結婚するまでなんて、言わないでよ」
「ん、もう、意地悪なんだから」

 芳樹が押入れを開けて、布団を引き出す。
「あら、随分、手回しがいいのね」
「後の物はおいおい揃えるとして、必需品だから」
 鈴世が寝具を整えている間に、芳樹は窓のカーテンを閉めた。
 エアコンの涼しい風が、静かに降りてくる。
 


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