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透明な滴の物語V
【同性愛♀ 官能小説】

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密告の代償-2

水滴が絨毯に落ちる音がした。
うつむいている千帆の真下だ。
千帆の頬から滑り落ちた涙だった。
「私、苦しいよ。とても苦しくて、仕方がないよ…」
千帆がすすり上げた。
「ごめんね、麻衣。みんなに麻衣の便秘のこと、バラしたりして」
また一滴、涙が絨毯に落ちた。
落ちた涙はあっという間に絨毯に吸い取られ、少し濃い色の染みを作った。

麻衣は、もう千帆のことを許していた。
千帆も自分と同じであった。
千帆もまた、浣腸の魔力に捕らえられ、それを咀嚼できずにいる憐れな犠牲者の一人だったのである。
千帆はその苦悩を長い間抱えてきたのだ。
たった一人で、誰にも相談できずに。

麻衣は千帆の真正面に膝をついて座った。
低いオレンジ色の陽光がうつむいた千帆の表情に陰影を作っていた。
麻衣が身を前へ進め、さらに千帆に近づいた。
「もう怒ってないよ」
麻衣の声は優しかった。
そして千帆の長い髪をかき上げた。
麻衣は、うつむき気味の千帆を下から見上げるように顔を近づけた。
「話してくれてありがとう」
そうささやいた麻衣は、唇を千帆の唇に近づけ、そして重ね合わせた。

千帆の目が驚きに見開かれた。
心臓と呼吸が止まったかのように頭が真っ白になった。
麻衣の温かく柔らかい唇を感じる。
そこには千帆に対する一切の許しが込められていた。
緊張が取り払われ、全身から力が抜けていく。
千帆の目から新しい涙があふれてこぼれた。
その涙は麻衣の柔らかく白い頬へ伝った。
自然にお互いが相手に腕を回すと、二人の唇は強く密着した。
低い夕陽は、二人が一体になった影を作った。
今、二人の垣根は取り払われ、単なるライバルだった関係は終わりを告げたのだった。



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