婦警のプライド-12
それから若菜が目を覚ましたのは朝の6時だった。気付くと体に毛布がかけられていた。頭がボーッとする。上半身を起こし少し畳を見つめてから立ち上がる。そして仮眠室を出て部署へと向かう。
「起きたか?おはよう。」
「おはようございます…。すみませんてした、今まで寝てしまって…。」
「捜査自体あまりする事なかったしせっかくだから休んだほうがいいと思ってな。コーヒー飲むか?」
「あ、はい…」
「じゃあちょっと待ってろ。」
石山はコーヒーを買いに行き戻ってきた。
「ありがとうございます。」
コーヒーを口にした若菜に石山が言った。
「おまえ、ずいぶんうなされてたぞ?悪い夢でも見たか?」
「はい。…」
若菜は昨夜の悪夢を石山に話した。
「とんでもない夢を見たもんだな。」
「正直、怖かったです…。悲しかった。味方がだれもいなくて一人ぼっちで…。先輩はあの時、とれだけの悲しみと恐怖を味わっていたのかと思うと…」
「もうそんな思いは誰にもさせないよ。絶対な。」
若菜の肩をポンと叩いた。若菜の表情が緩む。
「でも夢の中では石山さん、私が田口に酷い事されてるとき、ニヤニヤしながら興奮して見てましたよ?」
悪戯っぽく笑いながら言った。
「んな訳ないだろ、バーカ!」
「フフフ。ご馳走さまでした。あと、毛布ありがとうございました。」
「ああ。脚広げて寝てたからパンツ見えちゃいけないと思ってな!」
「私、そんなに寝相悪くありませ〜ん♪じゃあちょっと探偵から借りた資料に目を通してきます。」
「ああ。」
若菜はニコッと笑い出て行った。
(私は毛布をかけてくれる石山さんを信じますよ。)
歩きながら石山に心の中でそう言った若菜だった。以来、同じような悪夢を何度も見る事になる若菜だが、その度に毛布の温もりを思い出し心を暖める若菜であった。