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透明な滴の物語V
【同性愛♀ 官能小説】

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嵐の余波-2

ベテランの先生は満足していた。
「最初はちょっと恥ずかしいかもしれないけど、浣腸はとても有効な治療なんですよ」
麻衣は焦って尋ねた。
「え?先生知っているんですか!」
その声は上ずっていた。
「ええ。病院からはちゃんと報告を受けていますよ」
麻衣の鼓動は早まり、手のひらに汗をかいた。
(あの浣腸のことを知られている。病院も学校に報告なんてしなくていいのに)

しかし、生徒に手厚く面倒見がよいことも、この私立女子校の特長だった。
病院と学校の連携体制はしっかり機能していた。

「先生、お願いがあります」
「なあに?」
「昨日の治療のことをみんなに知られたくないんです。…だから、内緒にしてもらえますか?」
麻衣は「浣腸」という名称を口に出せなかった。
その名称を言ってしまうと、昨日の忌まわしい体験を思い出し、耐えられず泣いてしまいそうだったからである。
「大丈夫ですよ、麻衣さん。先生はプライバシーを守りますから、そういうことを他人にしゃべりません」
彼女は約束した。

保健室を出て、高校2年の自分の教室へ向かう。
廊下の窓から、敷地の真ん中に建つ体育館が見えた。
銀色に輝く屋根が曲線を描き、くるりと丸いひさしが宇宙船を思わせる体育館である。
(そういえば、昨日は、体育の授業から休んだのだった…)
麻衣は、皆が体育の準備をしている時に腹痛を起こした昨日のことを思い出した。
銀色の宇宙船は、朝のさわやかな日差しを受けて、今日の航海に旅立とうとしていた。
麻衣は昨日の出航には間に合わず、宇宙船は飛び立っていってしまった。
(私は昨日の航海を知らない)
麻衣は、銀色にきらめく宇宙船を見ながら、ひとり取り残されたような複雑な気持ちになった。

教室は朝の始業前で賑やかだった。
麻衣は自分の席についた。



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