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LADY GUN
【推理 推理小説】

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湯島武史-2

 矢沢から聞き出した住所を頼りに車を走らせる石山。中央署からわずか10分の所に湯島武史の自宅はあった。
 「こんな近くにいたなんて…。しかも恐らく今まで普通に生活していたんでしょうね。逃げずに警察の手から逃れていただなんて…まさに警察の恥ですね。」
 「全くだ。」
少し離れた場所に車を停める。
 「私1人で行きます。」
石山はニコッと笑う。
 「そう言うと思ったぜ。俺はここで見張ってるよ。危なくなったらすぐ呼ぶんだぞ?」
 「はい。」
車を降り湯島の自宅に歩いていく若菜の背中をじっと見つめる石山。
 「あの小さな背中に一体どんだけの物を背負ってるんだかな…。」
不適切かもしれないが不憫に思えた。しかし若菜は一歩一歩力強く歩いている。石山はじっと若菜を見つめていた。
 若菜はとうとう玄関までやってきた。やはり緊張が走る。微妙に恐怖も感じていた。よし、と心の中で言って顔を上げると呼び鈴を鳴らした。
 「はい。」
インターホンから声が聞こえた。女性の声だ。若菜は気を引き締めてインターホンに向かって口を開く。
 「夜分遅くに申し訳ございません。私中央署の上原若菜と申します。」
 「警察…?」
怪訝そうな声が聞こえた。
 「少しお伺いしたい事があるのですが、ご主人様いらっしゃいますでしょうか?」
 「お待ちください…。」
どうやら湯島武史に警察が来たと伝えに言ったようだ。もしかしたら逃げられるかもしれない。しかし逃げる気がないのはインターホンから男性の声が聞こえた事で分かった。
 「今開けます。」
鍵の音が聞こえた。間もなく玄関の電気が点けられドアが開く。とうとう対面だ。若菜の目に警察が長年追いかけてきたあの極悪レイプ犯、神がいた。
 「お待ちしておりました。」
湯島武史は穏やかな顔をしながらそう言った。お待ちしておりました…、不可解な言葉だ。何のアポもとってなく、初対面の若菜に向かって言う言葉にしては違和感がある。しかし若菜は思った。湯島武史は警察が訪れて来る事を待っていたのではないか、と。
 「どうぞ?」
中へ招く湯島。あまりに態度が良心的で逆に怖い。何かあるのではないかと疑心暗鬼しながら靴を揃えて中へと入る。リビングの入り口で彼の妻だろうか…、不安そうな顔をしながら立っていた。
 「どうぞおかけ下さい。」
 「ありがとうございます。」
若菜はソファーに座る。
 全くを持って普通だ。普通の家、普通のモテそうなサラリーマンだ。クールで整った顔、白髪が混じっている事がダンディーに思える。引き締まった体。若菜は抱かれてもいいぐらいの素敵な人だとちょっと思ったりした。


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