ダ-4
「どうしたの?」
手をつないで少し歩いた木陰のベンチに座って
梅雨になりそうな空模様を眺めていた。
「あいつと何の話をしてたの?」
「ん?あぁ。大したことないよ」
「教えてよ。気になる」
「・・・・あいつがいつまでも、自分が私のファーストキスの相手だって言うから
みんながいい加減、昔の話は忘れろって言ってたの」
「―――そっか」
蒼くんは両手で顔を隠してはぁ、とため息とともに大きく息を吐きだした。
「ごめん。俺、余裕ない」
どこまで本気なのか?
このヤキモチさえ、知らずのうちにカウントされているの?
「俺が、里香のファーストキスの相手になるはずだったのに」
それは―――
私も思っている事だよ。
本当に大好きだった。
ファーストキスは蒼くんがいいと思ってた。
お付き合いした時、何度もそう思った。
「過ぎたことだよ」
過去は変えられない。
「里香。一緒に講義をサボろう」
吹っ切って笑顔を見せた蒼くんは
「ずっと一緒にいたくて授業をさぼるカウントだな」
そういってほほに軽くキスを落として
手をつないで校門を抜け出した。