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真里菜の憂鬱
【兄妹相姦 官能小説】

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真里菜の憂鬱-5

(5)


 美咲が帰ってから真里菜はしばらくベッドに横になっていた。気持ちを落ち着かせようとしたがなかなかおさまらない。
 結局、勉強はしなかった。手作りのクッキーを持って兄に会いにきただけだ。
(いつもクッキーばっかり……ほかに作れないの?)

 思えば去年のバレンタインデーの前日、美咲が真里菜の腕を取って教室の隅に引っ張っていって、
「明日土曜日だよね。お兄さん家にいるかな」
真顔で訊いてきた。
「いると思うよ。なんで?」
「うん……もうすぐお兄さん卒業でしょう。それに、明日バレンタインだし。チョコクッキー焼いたの。渡したいから……」
「え?」
真里菜は動揺した。
兄に好意的だったのは知っていたが、接触してくるとは思わなかったのだ。
「あたし決心したの。紹介してね」
一方的だけど真里菜が断る理由がなかった。

(兄がどこかへ出かけてしまえばいい……)
嫉妬が顔を覗かせて、押し込めても現れて不安にさえなってきた。
(決心したっていうことは、告白するってこと?)
美咲は顔も可愛くて、スタイルもいい。クラスの男子にも人気がある。
(同級生と付き合えばいいのに……なんで……)
何にぶつけていいかわからない苛々がくすぶって不快だった。

 美咲の積極さには呆れたものだった。同じ学校だし、兄が彼女の顔を見かけたことはあったかもしれないが、初対面のようなものだ。それに家に来るのも初めてだったのに、二階に上がるなり、
「ここ、お兄さんの部屋?」
「うん」
いきなりノックした。

「真里菜ちゃんの友人の島谷美咲です」
(紹介してなんて言ってて、もう自分のペース)
「これ、自分で焼いたんですけど、先輩にと思って」
亮輔も突然だったので驚いていたようだが、すぐに満更でもない表情を見せた。
(ばか……)
「ちょっといいですか?」
図々しく兄の部屋に入りかけて、真里菜に向って、
「お兄さんと少しお話があるの。部屋で待ってて」
そう言ってドアを閉めた。
真里菜は言葉がなかった。
 美咲が兄の部屋にいたのは十分ほどだったと思うが、真里菜にはもっと長く感じた。

「お兄さん、美味しいって食べてくれた」
美咲の火照った顔がいやらしく見えたのはなぜだろう。

「お兄さんって、やさしいね。思った通り」
真里菜が黙っていたので美咲ばっかり喋っていた。
「高校に入ってからも会ってくれるって」
「会うって、どういうこと?」
「遊びに来ていいって」
(私は、いや……)

 美咲が帰ってからそれとなく兄に訊いてみると、「遊びに来ていいか」と訊かれたらしい。
「いやだって、言えないだろう?」
「そうよね。初めてなのに図々しい感じ」
「でも、明るい子だよな」
兄の笑顔は好意的な表情だった。
(可愛い……)
とは言わないけど、そう思ったかもしれない。
 訊きたかったのは美咲が『告白』したのかどうかだったが、真里菜にその勇気はなかった。

 翌月、兄の卒業式が近付いた頃、真里菜にとってショックなことが続いた。
「あの子、いつ来るかな」
兄に訊かれて美咲の顔が過った。それでも知らないふりして、
「あの子って?」
「この間の、島谷美咲っていう子」
「さあ、最近あんまり話さないから」
面白くない予感がしていた。ホワイトデーが三日後であった。案の定、
「一応、お返ししとかないと悪いから」
「気にしなくてもいいんじゃない。あの子、他にも渡してそうな感じだし」
嘘を言った。
「そうなの?」
「わからないけど、けっこう男子に人気があるし」
「そうか。でもキャンディ買ったから言っておいて」
「じゃあ……」
渡しておく、と言いかけて真里菜は言葉を呑んだ。そんなことは耐えられないと思った。きっと美咲は大喜びするだろう。
(私の目の前で……)
そんな顔を見たくなかった。
 仕方なく兄からの言葉を伝え、彼女はまた兄の部屋に一人で入っていった。真里菜に満面の笑みを向けて……。 

 美咲は帰り際、真里菜の部屋に寄って囁いた。
「お兄さんと付き合うことにしたの」
「付き合う?」
「そうよ。今日、約束したの。真里菜応援してね」
そして、
「あたし、卒業式にボタンもらう」
クラスでも何人かの女子が憧れの先輩の話をしながら、学生服の第二ボタンをもらうにはどうしたらいいか騒いでいた。
「もらうって、それも約束したの?」
「ううん。まだ言ってないけど、たぶんお兄さんくれると思う。当日言うの。その方が感動でしょ?」
それを聞いて、ボタンなんて興味がなかったのに心が騒いだ。
(渡さない……)
ボタンを……お兄ちゃんを……。

 兄の部屋を訪れた。
「お兄ちゃん。美咲と付き合うって、ほんと?」
「付き合う?そんなんじゃないよ。この前も言ったけど、真里菜の友達なんだから家へ来れば会うだろう。だからこれからも会えるって言ったんだよ」
「そういう意味?」
「そうだよ。なんか言ってた?」
「別に、ないけど。あの子、ちょっと変だから」
「変って?」
「ううん。いいの」

真里菜はハンガーに掛っている学生服に触れた。
「お兄ちゃん。ボタン、誰かにあげるの?」
「ボタン?」
「第二ボタン」
「ああ、そんなこと言ってるやつがいるな。ぼくはそんなのないよ」
「じゃあ、私にちょうだい」
「真里菜に?」
「ううん、私じゃなくて、隣のクラスの子に頼まれたの。思い出にしたいんだって」
「ふーん。誰だろう」
「思い出だから名前は言わないでっていわれたから。いいでしょ?」
「いいけど」
真里菜は机のペン立てにあるハサミを取った。
「いま?卒業式じゃだめ?ボタンないとおかしいよ」
「替えボタンあるでしょ。私、つけてあげる」
真里菜は言いながら熱い想いでボタンを切り取った。



 
  


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