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It's
【ラブコメ 官能小説】

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-1

本日5杯目のコーヒーを淹れ終えた陽向は、問題集を見てため息をついた。
今日から2月。
あと2週間で本番だという現実が重くのしかかり、その重圧に負けそうになる。
この間返却された年明け一発目の模試で、看護師の方はなんとかA判定をもらうことができた。
が、保健師は相変わらずC判定。
看護師はそっちのけで最近は保健師の方しか勉強していない。
実習の時もそうだったが、興味のないものを勉強するのは本当に辛い。

本番まであと2週間…。

湊からは1週間前に「国試終わるまで会わない」と冷ややかなメールが送られてきた。
何故かと言ったら「いつもだらけて終わるから」と、これまた冷ややかな返事が返ってきたのだ。
確かに…と思い、陽向は渋々了解したのだった。
湊は今、何をしているのだろうか。
雅紀たちと遊んでいるのだろうか。
『湊ー。何してるのー』
勉強に飽きた陽向は湊にメールを送った。
もともとあまりメールをしないので、こんなメールを送るのは珍しい。
陽向は携帯をソファーに放り投げた。
と同時にメールを告げる音が鳴る。
『いま、マーと遊んでる』
予想通りの答えが返ってきて、萎える。
でも、あと2週間経てばこの苦しみから解放されるのだ。
陽向はこの世で最も嫌いな勉強に立ち向かい、いやいや苦悩するのであった。

明日は本番…。
そんな日を迎えた2月の半ば。
遅刻してはいけないと思い、早めに勉強を切り上げて陽向はベッドに潜り込んだ。
アラームを6時きっかりにセットして目を閉じる。
と同時に携帯がけたたましい音を発する。
「…ぁい」
相手を見ずに眠気たっぷりの声で応答すると『おう』と聞き慣れた…それでいて懐かしい声が鼓膜を刺激した。
「え…あ……湊?」
『寝てた?』
「寝ようとしてた…」
『ははっ。ごめんな』
「いーよ。でも、どーしたの?珍しいね」
『明日、何時に家出んの?』
質問したのに、質問で返される。
「んー…7時前くらい」
『そ』
「ん…」
『じゃあもうおやすみだ』
「うん」
『頑張ってな』
「へへ…ありがと」
『おやすみ』
湊の声を久しぶりに聞き、陽向は幸せな気分に浸りながら眠りに落ちた。

アラーム音で目を覚ます。
緊張のせいか、目覚めはバッチリだ。
コーヒーを飲む間も自作のノートを眺める。
今日は保健師の国家試験。
興味がわかない分、ほとんどこじつけで覚えた。
6:50。
陽向は忘れ物がないか入念に確認し、家を出た。
鍵が閉まっているかどうか気になり、もう一度確認した。
全てにおいて敏感になっている。
エレベーターに乗り、マンションのエントランスをくぐり抜けると「おはざいまーす」と声をかけられた。
ビクッとして左を見ると、なんと湊が立っているではないか。
「えっ?!…え!なんで?!」
「ビビりすぎ」
オロオロする陽向を見て湊は眠そうな顔をして笑った。
「よく起きれたな」
「本番だもん。当たり前でしょ」
「ですね」
「てかなんでここにいんの?!」
湊はニッと笑うと「はい、これ」と言って陽向の右手に何かを持たせた。
「へ…」
右手には、赤い小さな御守り。
「頑張れよ。お前ならできる」
湊は陽向の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
いつの間にこんな物…。
「ありがと…」
「あと、これもやるよ」
湊はポケットからダースのミルクチョコの赤い箱を取り出した。
「これ食うと、何でも上手くいくの。ってゆー俺の中のジンクス」
「えー?本当?」
陽向はケタケタ笑った。
「…ありがとね、湊」
見上げると、湊は口をへの字に曲げた。
「そろそろ行くっしょ?」
「あ…うん」
「健闘を祈る」
「あははっ。本当にありがとね」
湊に手を振り、陽向は歩き出した。
真冬の冷たい空気が頬を撫でる。
今日は快晴。
きっと、いい日に違いない。


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