社会のゴミ-3
俺はS市のその界隈を歩いていた。牛乳瓶の底のような眼鏡をかけて杖をついて歩いていた。そのとき若い娘が声をかけて来た。
「あのう、足がご不自由なんですね。すぐそこに休むところがあるので、お連れします」
俺はよろけながらも初めは遠慮したが、再度の勧めで好意に甘えることにした。その女は俺の腕に腕を絡めるようにして誘導した。そのとき女の胸の膨らみが俺の二の腕に当たった。色仕掛けかと思った。
看板が埃を被ったスナックの店が見えて来た。その裏口に廻ると壊れかけたドアから中に入った。俺を案内していた女が空いている手に何か持って俺の体に押し付け来た。そして気絶した。
目が覚めると俺は後ろ手に縛られていた。ロープなら解けるが、プラスチックバンドらしい。足も足首のところで縛ってあった。俺は仰向けにされてズボンとパンツを膝のところまで下げられていた。
「ちょっとこの爺い、爺いの癖にチンポでか!」
女達の声が聞こえる。俺はまだ気絶した振りをしていた。4・5人はいそうな気配だ。1人の女が俺の一物を握ってしごき始めた。周りで生唾を飲み込む音が聞こえる。俺の持ち物が勃起するにつれ、その立派さに圧倒されているんだろうと思う。
「うわーっ、なにこれ、ちょっと。超でかくない?」「いやらしい」
どうやら俺の携帯のカメラで記念写真を撮っているみたいだ。そのうち俺が目覚めないので起こしにかかってきた。
「おい、爺い。エロ爺い、起きろ。ビッコの癖になんでこんなにチンポがでかいんだ」
誰かがそう言うと他の女達は下品に笑った。だがまだ若いハイティーンのようだ。俺は目をゆっくり開けてから自分の状態を見て驚いて見せた。牛乳瓶の底の眼鏡では驚いた表情も伝わらなかったかもしれないが。
「お前の携帯でお前の恥ずかしい写真は撮ったよ。これをアドレス登録している全員に一斉送信するとどうなるかなあ」
俺は首を横に振って見せた。どうやら話しかけている女がリーダーらしい。だが、頭の上の方に立っているので姿は見られない。
「時計も服も良いのをつけてるから金持ってるかと思ったら一円も入ってない。けれど銀行の預金カードは持っている。カードで買い物するほどの金持ちらしいな。他にも信販カードもあるし、ところで暗証番号を言ってもらおうか」
俺はそこで必死にお願いした。そのうちの200万だけ盗るなら良いが、それ以外は社員の給料だから手をつけないでくれと。いくら脅されてもそれを約束してくれないと教える訳にはいかないと。
なにやら囁きと忍び笑いが聞こえて、リーダーの女が声を出した。
「良いだろう。200万あれば当分遊んで暮らせる。約束しよう。それ以上は下ろさずに爺いに返してやろう。さあ、暗証番号を言え」
俺は暗証番号を言った。そして付け加えた。
「下ろしに行くなら1人で行かない方が良いぞ。持ち逃げもあるし、全額下ろすかもしれない。それに途中で襲われるってこともある」
それを聞いてリーダーの笑い声が聞こえたが、その後真剣に考えたようで留守番2人置いて3人で出かけることにしたようだ。どうせ約束を破って全額を下ろそうとするに決まってる。だが全額と言っても数百円しか残ってない筈だ。それを知った時はきっと頭に来て、その場で記念写真を一斉送信するだろう。だがアドレスを登録している相手はアダルト男優時代の知り合いばかりだから、性質の悪い冗談くらいにしか受け取らないだろう。
残った2人のうちの1人が俺を案内してスタンガンを使った娘だったのは幸いだった。俺は一物を出したまま正座すると靴の踵から剃刀を出し、手足のプラスチックバンドを切った。俺はもう1人がトイレに行っている隙にスタンガン娘に背後から飛びついて裸締めで落とした。そしてスタンガンを取り上げた。
トイレから戻った娘はドアから出た途端にスタンガンを押し付けられて気絶した。俺はスナックのカーテン布のようなものを裂いてロープを作って、2人を背中合わせに縛った。その縛り方はアダルト出演のとき覚えた変態緊縛の方法だ。
両腕は上に上げて首の後ろで縛り、それを互いに結びつければ腕は下げることができない。そして両足はM字開脚になるようにして、立ち上がれないようにした。
一応仲間が帰って来たときに騒がれたら困るので、店の奥の小部屋に運び、猿轡代わりにガムテープを口に貼った。
待ち構えていると、足音をドンドン立てて3人が帰って来た。
「あの爺い、ただでおかないぞ。何が200万だ」「リンチだ」
そう言いながら3人とも中に入って来て一瞬誰もいないのできょろきょろしたとき、俺はドアの陰から飛び出して女どもを順番にスタンガンを押し付けてやった。3人目のリーダーは逃げたが俺は追いかけて部屋の隅に追いつめると眼鏡を取って言った。
「じたばたするんじゃねえ。このメス猫が」
俺の本当の顔を見て、その女は凍りついた。
「や……やくざ屋さん? 」
女が涙目になったときに俺はスタンガンを当てた。