ラクシュさんがアーウェンくんに、イけないことをしていまーす-3
腕を戒めるツル草は、幾ら力を込めても締め付けるばかりで千切れない。
何度も唇の角度を変えて互いの口内を貪り尽くしてから、ようやくラクシュが荒い呼吸を吐いて唇を離した。
間近にある赤い瞳は熱に蕩けて、そこに同じくらい蕩けた自分の顔が映っている。
「駄目ですか……?」
耳朶を甘噛みして囁くと、細く白い身体がビクンと跳ねた。こんなに細く非力そうなのに、軽く肩を押えられているだけで、立ち上がることもできない。
「ん」
ラクシュはきっぱりと頷いてみせたが、辛そうに眉をひそめ、腰を揺らめかせている。
可愛くて卑猥で、たまらないほど欲情を煽られた。
音の響く浴室に、二人分の荒い呼吸が反響する。アーウェンの眼はとっくに虹彩を帯び、オリーブ色の髪からは狼の耳が出てしまっている。同色の尻尾が、濡れた床を跳ね打っていた。
「ラクシュさん、ちょっと膝立ちになってください……」
「ん?」
小首を傾げたラクシュは、それでも素直に向かい合ったまま膝立ちになる。アーウェンのちょうど顔の前に、真っ白な乳房がつきだされる位置になった。
「じゃあ、ラクシュさんも我慢できなくなったら、許してくれますか?」
そう囁き、返事を待たずに濡れ光る胸に舌を這わせる。薄甘い薬液の味がしたが、舐めても特に害はないものだ。
「ん、んぅ……」
ラクシュがアーウェンの頭をかき抱くようにして、ビクビクと身体を痙攣させる。
薄赤く充血した乳首を唇で挟み、舌で転がした。両手が使えないのがもどかしいが、慎重に舐め、口に含んで吸うと、何度も小さく息を飲む声が聞えた。
「ラクシュさんを、思い切り抱きたい……」
すっかり尖りきった先端に息を吹きかけながら訴える。片足を曲げ、中腰になっているラクシュの、蕩けた秘所を膝で軽く擦った。
「んあっ!」
とたんに彼女から、悲鳴があがる。膝で嬲った場所は驚くほど熱を持っていて、ねっとりと零れおちた蜜が糸をひいて滴った。
粘着音をたてながら更に嬲ると、悲鳴とともに腰を引かれてしまった。
「……めっ」
消え入りそうな声と共に、ペチンと前髪をはじかれる。赤い瞳が潤みきり、唇は充血して赤みを増していた。
「アーウェン……動く、だめ……」
抑揚のない声すらも濡れた艶を含んでいて、聴覚を刺激する。
ラクシュのほっそりした指が雄の屹立に絡み、ゆっくりと腰を降ろしていく。
じれったいほどの動きで先端が飲み込まれ、再びラクシュがアーウェンの首に両腕を伸ばして掴まる。
「っ! ぁ……っ!」
先端だけを埋め込んだ状態で止まられ、今度はアーウェンが泣きそうな悲鳴をあげた。散々煽られ、もう少しで達してしまいそうなほどなのに。
歯を喰いしばり、拷問じみたもどかしい快楽に耐える。
「ん、くぅ……」
ラクシュのほうでも、もどかしげに眉を潜めて喉を反らしていた。たまらず不自由な身体を精一杯動かし、噛み付くように口づけた。
唇を合わせる合間合間で、切れ切れに頼んだ。
「ラクシュさん、好きです……抱きたい……抱かせてください……」
「……反省、した?」
ラクシュも相当に我慢しているらしく、声が震えている。。
「はい……でも……」
とても申し訳なかったが、正直に言うなら、こうとしか言えない。
「もう絶対しない自信はないです……前からラクシュさんを大好きだったのに、もっと好きになってきて……止まらなくなる」
「ん、アーウェン……」
困惑したようなラクシュの頬へ、慎重に丁寧に口づけた。
「もちろん、できるだけ気をつけます。ラクシュさんの嫌な事はしたくないし……」
頬擦りをすると、いつもスベスベしている白い頬は薬液と汗で少し粘ついていた。赤い瞳を見つめて頼み込む。
「それでも暴走しちゃったら、また叱ってくれますか?」
自分でも苦笑いするしかないような言い草だが、ラクシュは重々しく頷いてくれた。
「ん……」
あれだけしっかり腕を拘束していたツル草が、嘘のようにあっけなく外れて床に落ちる。
そして短く息を詰めたラクシュが、腰を一気に下まで降ろした。
「っ!」
衝撃と快楽にアーウェンも眩暈がしたが、喉を反らして無言で喘いでいるラクシュの背を、慌てて抱きしめる。
やっぱり腕が自由なのは良い気分だ。
それにもう二人とも裸だから、衣服を破いてしまう心配もない。
「アーウェ……欲しい……」
「はい、俺も……」
互いに我慢していた分、思い切り激しく求めあった。
ラクシュを抱く時、いつも激しい焦りがあったのは確かだ。
彼女が自分の前を去ると言った時、目の前が真っ暗になった。両足をへし折ってでも引き止めたいと、暗い凶暴な思いに飲み込まれそうになった。
あれほど和やかで幸せな十年を積み重ねても、たった一瞬で終わりにされてしまうなら、どんなに憎まれてもいいから、喰らいつくして手に入れてしまいたいと思った。
「っは……」
対面で座ったまま繋がり、ゆっくり息を吐いて、濡れた白い髪を撫でる。
こうして繋がっていても、こみ上げる焦燥を完璧にはまだぬぐえないけれど、それでもラクシュは約束してくれた。
アーウェンと一緒にいたいから、彼が間違いを犯した時には、故郷を捨てた時のように去るのではなく、きちんと怒ってくれると。