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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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ホワイト・ライ・クリスマス-4

「すみません!! サンタクロースって、空想の存在なんです! 今まで贈ってたの、本当は全部俺でした!」

 アーウェンは派手な音をたてて、テーブルに両手をつき、額を打ち付けた。とても顔をあげられず、そのまま小さく言葉を続ける。

「……からかうつもりとかじゃなかったんです。サンタクロースから貰ったほうが、ラクシュさんは喜ぶんじゃないかと思って……でも、騙してたのは事実です」

「ん、そっか……」

 やっぱり、というようにラクシュは呟き、静かに席を立って、スルスルと食堂を出て行った。

(はぁ……さすがに呆れられちゃったか……)

 一人残された食卓で、アーウェンはがっくりとうな垂れる。
 思えば、黒い森の壊滅事件を隠そうとした時も、こんな風に嘘を重ねたあげくに失敗した。
 まるで学習できない自分に涙が出そうだ。

 まだ残っている料理を食べる気にもなれず、どうしようかと悩んでいると、不意にラクシュが音もなく戻ってきた。

「ん」

 生成りのフェルトを赤いリボンで縛った小さな包みを、両手に乗せて差し出され、アーウェンは目を丸くする。どう見てもプレゼントのようだ。

「ラクシュさん……これは?」

「サンタクロース、アーウェンなら……これ、君のもの……」

 ポツポツと告げられる言葉を、信じられない気分で茫然と聞いていると、そっと手を取られて柔らかな布包みを渡された。

「アーウェン、強いから……これ、必要ない、言ってたけど……今年は、我慢して?」

 開けてみると、紫の鉱石を中央に配置した首飾りが出てきた。紫は、防護の魔法に優れた効果を発揮する石だ。
 極上の材料を、これほど精巧なビーズへと加工してあれば、この首飾りは身に付けた者を、どんな衝撃からも守るだろう。

 ―― もう一つ、ラクシュに嘘をついていたことを思い出した。

 ラクシュは、アーウェンを初めて一人で遺跡に行かせる時に、心配してこれと同じものを造ってくれたのだ。
 けれどアーウェンは、自分は強くなったから必要ないと言い、断固として受け取らなかった。
 そしてその首飾りは、鈴猫屋に卸す商品に加えて貰ったのだ。

 ……本当は、ラクシュの好意がとても嬉しかった。
 彼女の優しさが篭ったプレゼントが、すごく欲しかった。

 けれど、魔道具を造るのだって、当時のラクシュには、十分に負担となっていたから。
 それでも彼女は決して『魔道具を造ってアーウェンを養う』のを、止めようとしなかったから。

 ならばせめて自分が受け取らない事で、たった一つでも、彼女の造る量を減らしたかった。

「……すみません。本当は、これがすごく欲しかったんです」

 深い溜め息と共に、アーウェンはその嘘も白状する。

「そっか」

 ラクシュが頷いた。とても嬉しそうに。
 ほっそりした指が、革紐を丁寧にアーウェンの首へかける。

「……今年も、プレゼントを用意してあるんです」

 胸元で輝く紫の石を見つめながら、アーウェンはようやく切り出せた。

「俺からのプレゼントも、受け取ってくれますか?」

 自分はなんて臆病な狼なのかと、我ながら呆れる。
 全部の事情を知った今でも、ラクシュに関してはいちいち脅え、事あるごとに空回りしてしまう。
 恐る恐る視線をあげると、ラクシュがコクンと頷いた。

「欲しい」

 短く言った声は抑揚もなく、相変わらず無表情だったけれど、とても幸せそうな気配を漂わせていた。
 だから、アーウェンの狼耳と尻尾は、とたんにピクピクパタパタと動いてしまう。

「ラクシュさあああん!! 大好きです!!!!」

 もう何度、この言葉を叫んだだろうか。
 ラクシュに飛びつき、青白いがもうやつれてはいない頬へ、グリグリとほお擦りした。

「ん」

 満足そうに、ラクシュが頷く。

「君は、とても素敵な……私の、サンタクロース、だよ」

 終


 *「ホワイト・ライ」 - 意味 善意の嘘。 悪意のない嘘。


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