夢うつつ-1
腕から肩や背中に揉まれて行くに従って、琴音は腰や尻が敏感になって行くのを感じた。
腰や尻が松蔵の手で揉み解されるのを心待ちにしているのだ。だが、これは私ではない。
腰や尻が疲れているから揉み解されることを欲しているだけだ。
体に水分が足りぬと喉が渇くのと同じで、自分の心の意志とは関わりないのだ。
琴音はそう思った。思うようにした。
「これはかなり筋が張っている。解すのに少し時間がかかるが構わぬか?」
「手間をおかけする。面目ない、兄弟子」
松蔵はしばらく腰や尻の肉を揉んでいたが溜息をつくと、琴音を仰向けにしてから両膝を畳んで胸につけるように押し付けた。
そして畳まれた脛の上に圧し掛かるように体重を乗せて来た。
「おお、兄弟子、何を致す」
「静かに、尻の肉が固く縮んでおるので伸ばしておる」
確かに尻の肉が引っ張られて痛い。痛いが気持ちよい。それよりも畳まれた足の上から松蔵が跨って体重をかけて覆い被さっている姿に何か妙な気持ちになって来る。
そう良く耳にはさむ男が女を犯す形に似ているような気がするのだ。
そう考えていると琴音の股間が痺れるような感じがして来た。
それと同時に胸の鼓動が激しくなって来た。
「兄弟子、こうしていると胸の鼓動が激しくなってくるのだが」
「恐らく滞っていた血流が流れ始めた故だと思うが、今しばらく耐えられよ」
それが終わると今度は股を大きく開いて内腿の筋を扱くのを始めた。
股を開くだけでも筋が伸びるのに、その伸びた筋を指先で弾くようにするのだ。
まるで弦を奏でるようにそれを行うと、琴音の花芯は共鳴し響きが増幅されて行く。
「これをされると妙な気持ちになって来るのだ、兄弟子。」
「気分が優れないか。気持悪くなるのなら短めに切り上げるが」
「いや気分が悪いというより、心地よいというか……お酒を少し頂いたときのようなふんわりとした雲の上にいるような頼りない感じなのだ」
実際琴音は筋を弾かれるたびに女の芯に響く松蔵の指の動きに犯されているような気分になっていた。
そして両足の内腿の筋を時間をかけて解されるうちにうわ言のように声を漏らし始めた。
「琴音殿、具合が悪いのならここで止めるが」
「いや……ああ……最後まで……兄弟子……うう……」
何か琴音は股間がじんわりとして体がピクンピクンと震えたのを覚えた。
軽く気が遠くなったような、何か甘い痺れるような衝撃が背骨の中を走ったような気がした。
その後も足の揉み解しは行われ、全身を捻ったり伸ばしたりする手技が行われたが、骨が音を立てて軋むたびに胸の奥から甘露な汁が湧き出るような心地よさを覚えた。
琴音は昨日よりもさらに全身ぐったりして体全体雲の上に浮かぶような心持ちになった。
そしてそのまま床に就いた。
朝方見た夢には、初めから松蔵が現れていた。松蔵が褌一つで琴音の折り畳まれた足の上から跨って乗っている。
琴音は肌襦袢一つで膝を胸に押し付けられている。
『兄弟子、この形は恥ずかしい。それに何故褌一つの裸になっておるのだ』
『この褌を取っても構わないが、亡き母の形見のお守りがしまってある故』
『なに? 兄弟子も師匠と同じく母上の形見を下腹に入れておるのか』
『そうじゃ。男(おのこ)は皆、下腹に宝物を持っておる。お見せしようか』
『いや、良い。見せんでも良い』
すると松蔵は琴音の女の芯に手を伸ばして来た。
『女子(おなご)もここに蜜の壷を隠しておる。それと同じじゃ』
『よせ、兄弟子。妹弟子に何をする積りじゃ。ああ、やめよと申すに』
すると松蔵は褌の中からコケシと袋を取り出した。
『このコケシをそなたの蜜壷の中に入れれば、2人は夫婦になるのだ』
『ならぬ。そのコケシを入れてはならぬ。その袋も駄目じゃ』
『この袋は入れぬ。中に宝玉が2個入っておる。子宝の玉じゃ』
『子宝? ならぬ。ならぬ。』
すると琴音はそのコケシに目鼻がないのを見て叫んだ。
「きゃぁぁぁぁ」
上体を起こした琴音は布団の上で目を覚ました。
そして部屋の柱まで行くと額を2度3度ぶつけた。
「ふ……ふしだらな……武家の娘ともあろうものが……」