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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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水車対策-1

黒田玄武は桜庭道場の奥庭にいた。一人の高弟と対峙している。
「お前は浅岡啓次郎と何度も稽古して『野分』を破った『水車』と同じものを会得したと言うが間違いないか」
言われた男は着物を捲り腹を出した。紫色の傷があちこちに一杯ついている。
「浅岡殿の『野分』は決して未熟なものではありませんでした。
実際のところ野分を避けることなど無理なことなのです。
この傷がその証です。多田琴音が野分を破ったのは偶然なことだったのです」
「偶然だと?」
「技写しの新兵衛と言われた拙者ですら、野分を破ることはできませんでした。ただ……」
「ただ……ただ何だというのだ」
「野分をすると分かっていて、こちらから先に動いた時にだけ破ることができました。」
「お前が先に動いて『水車」をしかけたのか、まだ来るのが『野分』だと悟る前に」
「はい、だから『野分』が来ると予想したことになります。それは八卦と同じで当たったのが偶然なのです」
「ではやって見せろ。わしがやる『野分』を破ってみせろ」
「はい、但し今言ったように私から先に『水車』をしかけます。それでなくては間に合わないので」
玄武は新兵衛と対峙した。新兵衛の鳩尾から半間のところに中段の剣先を向けた。
新兵衛は下段右後方に木刀を構えた。そしてそれを背後に隠した瞬間。
「でやぁぁぁぁ」
新兵衛の体は右肩が後ろに下がる方向に回転した。その為玄武の突き出した剣先が鳩尾を掠って外れた。
玄武の右の首に新兵衛の木刀がピタリと当たった。
新兵衛は右手だけを伸ばして木刀を持っていた。つまり啓次郎と琴音の試合の結果を見事再現したのだ。
玄武はにやりと笑った。
「勝てる。これなら勝てる。他の方法でも勝てるが、『野分』で勝てなければ意味がないのだ。」
玄武は新兵衛に言った。
「もう一度やろう。お前から動け。だが今度は『水車』を破ってみせる」

 


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