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少女剣客琴音
【歴史物 官能小説】

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琴音葛藤-1

けれどもその朝は体がとても軽く全身力が漲っていた。飛び上がると6尺の塀の上に登ることもできた。これは琴音としては初めてのことだ。
おまけに体がとても柔らかい。関節の可動範囲が広がったとでも言おうか。
試しに木刀を振ってみると、回転の動作が素早く滑らかにできる。
庭の隅の草に試すといとも簡単に草を絡めて根を抜くことができた。
「昨夜、松蔵殿に体を揉み解してもらったせいだ」
琴音はそう思うと、これだけは毎日して貰わねばと思った。
それは黒田玄武に勝つためというのが目的であり、決してあの『変な感じ』を味わう為のものではない、と琴音は自分に言い聞かせた。
しかし草を抜く稽古は予定よりも早く終わってしまった。
というのは、もはやその動作は琴音にとって苦労でもなんでもなく、いと易いことになってしまったからだ。
3日分の区画を半日で終えてしまったときには、さすがの松蔵も口を開けて言葉を失った。
その日の揉み解しはとても軽く終わったので、琴音は険しい顔で松蔵に詰め寄った。
「何故に松蔵殿は、手を抜くのですか?腕だけは昨日と同じだが、後は軽く触れただけで流しておるではないか」
その問いに松蔵は感心したように琴音の顔を見て言った。
「琴音殿の体はとても不思議だ。今日の稽古の様子を見て予想はついたが、腕にまだ負担はかかっていたようだが、肩や背や足腰に疲労は溜まっていないのだ。
もはや無駄な力が入らないで自然にできている証であろう」
それを聞いて琴音は物足りぬ気はしつつもそれを顔には出さぬように努めて言った。
「そうか。それだけ私が上達したということか。それならそれで良い」
松蔵と別れた後、琴音は体が動かし足りぬ気がした。特に足腰に負担をかけるような稽古が足りない気がしたのだ。
それで米蔵から米俵を一つ担ぎ出すとそれを持って裏山まで頭に載せて一走りすることにした。
米俵を担いで歩くのは無角師匠に言われてしたことがあるが、走るのは初めてだった。
しかし走れないことはない。途中何度も歩いたがそれでも再び走り、結構長く続けることができた。
満足して戻り、もう一度一風呂浴びようかと思っていると松蔵がふいに現れた。
「何をして来たのだ」
「物足りぬから膂力を養う為に米俵を担いで裏山を走って来たのだ。走り通すことはできなかったが、半分以上は走った」
「勝手に体を酷使しては困る。これから湯に入るのか」
「そうだ。汗を流したい」
「その後、体を見る。凝り固まっていれば解さねば明日の稽古に響く故」
「あい分かった。手間をかける」
そう言って風呂に入った琴音は何故か胸をときめかせていた。
風呂の中で顔を綻ばせている自分に気づき、また頬を思い切り叩いた。
するとまた涙が出て来た。
「い……痛くない。痛くなんか」

 


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