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LADY GUN
【推理 推理小説】

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抑えきれない想い-6

 その時、いきなりあの野太い声が聞こえた。
 「ハハハ!ネーチャン、言うねぇ!ごもっともだ。おい角田!おまえその拳をどうするつもりなんだ?」
 「あ…」
親方の声に力を抜き握りしめた手を緩めた。ずんぐりとさた体で肩で風を切りながら歩み寄る。
 「まさか女に手を上げるつもりだったんじゃねぇだろうなぁ?」
 「い、いえ…」
萎縮する俊介の顔を覗き込む。
 「ったく腑抜けた野郎だ。ここに来たときから湿気た面ばかりしてやがって。ここにはそんな腑抜け野郎はいらねーよ。今日限りクビだ。」
 「えっ?ち、ちょっと待って下さい親方!」
焦る俊介。そんな俊介に親方が言った。
 「ネーチャンよ、この腑抜け野郎を警察に持って帰って鍛え直してくんねーかな?」
 「えっ?」
どうやら若菜が刑事で、俊介も元刑事だと言う事は知っている様子だった。
 「何をウジウジしてんだか知らねぇが、男だったらスッキリするまで這いつくばってみろってんだ!おまえ、警察戻りたいんだろ?彼女の仇を討ちたいんだろうが!立ち上がれよ。こんなとこで地面見て道路なんかを掘り起こしている場合じゃないだろう?ネーチャン、陰気臭くなるからとっととこいつを連れて帰ってくれ。」
言葉は荒いが温情溢れる言葉に胸を打たれた。
 「親方…」
泣きそうだった。親方は笑みを浮かべて鼻の下を指で擦りながら言った。
 「ま、腑抜けた根性直ったらまた訪ねて来いよ。いつでも雇ってやるからよ。」
その言葉に俊介の涙が溢れた。
 「親方…」
そんな俊介の肩を抱き寄せる親方。
 「仇、討ってこい。」
 「はい…。ありがとうございます。」
俊介はようやく胸の支えが取れたような気がした。誰かに後押しして貰うのを待っていたのかも知れない。あの時止まった時間がようやく動き出したような気がした。
 今日一番のいい仕事をしたなと我ながら感心していた親方は何となく熱い視線を感じた。親方はその熱い視線に目を向ける。すると若菜が顔の前で手を合わせ目を輝かせているのが見えた。
 「お、親方…、素敵…!」
惚れ惚れさせられたかのような声で言った。
 「い、いや…」
美人にそんな事をしみじみ言われるとさすがに照れてしまう。
 「ヤバい…、惚れちゃいそうです…お・や・か・た♪」
タジタジの親方。照れを通り越してしまい若干ヒキ気味だ。
 「か、カンベンしてくれよ、ネーチャンよぉ…。」
様子を見ていた他の作業員から囃したてられますます恥ずかしい。照れ隠しで怒鳴り散らす親方が可愛らしく感じる。
 「ま、とにかく熱い気持ちがあるなら燃え尽きるまでやってこいよ。角田もネーチャンもよ?なっ?」
 「はい。」
力強く返事した俊介。
 「いつか私も雇って下さいね♪」
そう言った若菜に笑顔で答える。
 「ああ。楽しみにしてるぜ、ネーチャン!」
俊介は深々とお辞儀をして世話になった作業員達に別れを告げたのであった。


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