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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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スナイパー〜二匹の小鳥〜-6

「フッ、暗記すればバレることはないと思っていたが、『あいつ』のマニュアルもあてにはならないな」
小さな薄ら笑いを浮かべながら烏は首を左右に振った。
「確かに俺はお前の言う様に普通の高校生じゃない」
「では、一体どこのどなたなのかな?」
張り詰めた空気の中、桜子の質問が琴を弾いた様に響き渡った。
「お前に答える義務はない。危険な目に合いたくなければ俺に関わらない事だ」
「ほう、君に関われば危険な目に逢うのか。つまり君は今現在、何者かに命を狙われていて、その追っ手から逃れる為に高校生として生活する事になった。そして君に関われば仲間とみなされ、その者も命を奪われる危険性がある……と、そんなところかな?」
その瞬間、烏の左目が鮮やかなエメラルドグリーンに光り輝いた。烏は桜子に殺意と邪気が入り交じった凶悪な、その光り輝く瞳を向ける。
「……俺は頭のキレる奴は嫌いじゃない。だが物分かりの悪い奴は好かない」
「……僕を殺す?その場合は更に大事になる……つまり自分で自分の首を締めることになる」
暫時、時が止まったかの様に烏は桜子を睨み続け、チっと舌打ちをした。
桜子から目を反らした烏の左目からは既にその輝きは消え失せていた。
そのまま烏は、桜子達に背を向けると無言で部室を後にした。

「ああ、恐かったぁ」
全身の力が抜けたまひるはその場にストン、と腰を落とした。
そんなまひるに桜子は優しい表情を向けた後、差し込んでくる夕日に目を細めながら視線を向け、小さく呟いた。
「楽しくなりそうだな」





一方その頃、斉藤 三五は……休んでいた。
疲れた。
動悸、息切れ……って僕は爺さまかっ!
「爺さまなのかっ?」
椅子に腰掛け、机に顔を伏せた状態で自身に問い掛ける。
俺は……爺さまだ。
じゃ、ねぇぇぇ!
今の現在地は三年二組、僕と烏丸と可奈子の教室だ。
あのはちゃめちゃな桜子と沖田から逃れる為に走り続けた僕は、疲れ果ててこの教室に行き着いたのだった。
そういえば烏丸の野郎を部室に置いてきてしまったな……。
まぁ、あいつなら何とかするだろ。
部活に出ている為、誰も居ない教室の不用心にも開けっ放しの窓から涼しい風が流れこんできて、走り疲れてほてった僕の体を緩やかに包みこんでくれる。
机に顔を伏せている状態のせいで、視界には何も映らないのだが、不意に聴覚に何かが聞こえてきた。
トッ、トッ、トッ……
規則正しく響いてくる音……強いていうならば、何か軽い物が壁と接触する音か。
トッ、トッ……。

急に音が止んだ。

バリーーーーンっ!

「どわぁぁ、何、何?モビ○スーツの強襲、衛星攻撃、ラ○ちゃん?」
どれがきても嫌だけど。
反射的に音が聞こえた方向に顔を向けて見ると、全身を黒く薄いワンピースで纏った女性がひざまずく様にして割れた硝子辺の真ん中に座っていた。
女性が破ったと見られる窓の外には細いロープが垂れているのが見える。
急にあの噂話が頭を過ぎった。
―――全身を黒い衣装で纏った吸血鬼―――

「だぁぁぁぁ、出たぁぁ」
いつもの僕なら尻尾巻いて即座に逃げるのだが、情けなくも足がすくんでピクリとも動けない。


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