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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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スナイパー〜二匹の小鳥〜-5

「僕はただ駆け抜けるのみ!By ソロ○ンの悪夢」
そのまま逃走。
行き先はどこだっていい。
俺は自由がほしいんだ!
「ちょっ、待ちなよ三五」
後ろから可奈子が追ってくるが、気にしちゃ負けだ。
早く行かないとコ○ニーが落下しちゃう。





三五と可奈子が消えた教室には桜子とまひる、山南、そしてもう一人の人物が残されていた。
三五に飛び掛かったはいいが見事に回避され、覆いかぶさる形で桜子の上に転んでいたまひるが先に立ち上がる。
「むぅぅ、痛い。三五先輩はホントに痛いんですねぇ」
「……全く、痛いだけでなく部員同士のジョークも通じん奴だな」
続いて制服に付着した埃や何やらを手で払いながら桜子が立ち上がる。
次に桜子は、部室のドアに最初から立ったままでいる一人の男に目を向けた。
「さて、先刻からここにいる君は一体何者なのかな?」
柔らかな物言いで、桜子は男に言った。
桜子が三五に尋ねようとしていたのは三五と共に部室にやってきた、この男の事だったのだ。
「ああ、自己紹介がまだでしたね。僕は三年の烏丸 弾です。昨日、この学校に転校してきたんですよ」
言い終わった後、烏はニコッと整った顔立ちで微笑んだ。
「ほう、昨日。それでこの『幽霊部』に何の用件があって君の様な転校生が斉藤と共にやってきた?」
桜子は三五に飛び掛かった際に落としていた教科書を拾うと、再び丸め直した。
「三五君と可奈子ちゃんに勧められたんですよ。部活決まってないなら『幽霊部』に入らないか……って」
「ふむ、二人に……」
言いながら丸めていた教科書をもう一度広げ、再び丸める桜子。
烏は笑顔で桜子の顔を見つめ、対する桜子は目を細めながら烏を見つめた。
烏の笑顔と相等すると桜子の表情は正反対だった。 桜子のそれは、まるで烏を敵視するようにも見て取れる。
それに伴い、部室内の和やかだった空気も次第に緊迫した空気に変わっていく。
「もぅ、首領。何してるんですか?折角の新入部員の人なのに……」
まひるは桜子にそう言うと、ドア際に立つ烏に近寄って行った。
「烏丸さん、よろしく……」
「まひるっ!そいつに寄るな」
まひるが烏に近づいた刹那、桜子の声が部室に轟いた。
それと同時にまひるの体がビクッと震え、動きを止めた。
そして、その声に反応した山南は先ほどまで興味なさそうに座っていた椅子から急に立ち上がり、未だ笑顔の烏を睨みつける。
「どうしたんですか?急に大声をだしたりして……」
烏の笑顔と高校生の日常会話とは掛け離れた物言いに桜子は鼻でフッ、と笑った。
「いい加減、下手な芝居はやめたらどうだい」
「……芝居?」
首を傾げる烏に桜子は淡々と続けた。
「見たところ、誰にでも優しいといった基本的な好青年を必死に演じている様だが……君は只の一転校生ではないだろう」
桜子の言葉に烏の顔から笑顔がきえる。
その様子を確認した後、桜子は言葉を続けた。
「上手く高校生に成り切ったつもりだろうが……残念。今時そんな物言いの高校生はいない、それにいくら顔付きや口調を変えても、君の体からは匂うんだよ……染み付いた人間の血液の匂いが……ね」
桜子は右の手に握った丸めた教科書を一直線に向けると、今までとはまるで違う威厳を込めた表情で烏を睨んだ。
「……もう一度聞く、君は一体何者だ?」
烏は小さく溜め息を吐くと、作った顔ではなく彼自身が持つ心ない冷たい表情を桜子に向けた。


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