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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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クラスメイトはスナイパー-1

(ちっ……、マズッたな)
漆黒の夜の街道を疾駆する人影は、後方から自分を殺ルために執拗に追跡を続ける二、三の追ってから逃れながら、自分のおかしたミスを悔やんでいた。
彼の名は、烏(カラス)
いや……正確に言うなれば、彼に名はない。
烏という名は『組織』が彼に与えたコードネームなのだから……。
捨て子であった烏は『組織』のボスに拾われ、物心ついた時からボスの『お気に入り』として、徹底的に戦闘技術を叩きこまれ……10歳になる誕生日の日に初めて人を殺害していた。
そんな烏が18歳の誕生日を迎えた今日、ボスから直々に頼まれた依頼を遂行する為、動いたのだ。
その依頼とは、敵対する組織のボスの殺害だった。
烏は事前に仕入れていた情報から、ターゲットが通過する場所を割り出し、完璧に狙撃できる場所を陣取っていた。
スナイパーライフルは入念にメンテナンスされた烏専用の無反動タイプ、更に自身にうった薬(ヤク)は一時的に極限まで集中力を高めることが可能な『組織』の『スナイパー』御用達の物。
何もかもが完璧なはずだった……。
……彼のスコープに女の子の姿が映るまでは……。
そう……ターゲットには幼い娘がいたのだ。
ターゲットに向かって楽しそうに笑いかける少女の顔が、烏の覗くスコープに映しだされた時、烏自身に迷いが生じたのだ。
案の定、迷いの残る烏の放った弾はターゲットから逸れた。

それが彼の犯したミス……。感情を消さなければならないスナイパーにとって、最も大きなミスを彼はしでかしてしまったのだ。
「チッ」
烏は小さく舌打ちをすると、自分のミスを頭から消し去るかの様に頭を左右に振った。
ゴゥン、ゴゥン……。
唸るような轟音が夜の静寂を突き破る。
烏を追う追っ手が、拳銃のトリガーを引いたのだ。
もちろん狙うのは、自分達のボスを殺そうとした『スナイパー』である烏しかいない。
僅かな月明かりに照らされ、ぼんやりとしか目認できない烏の影に向けて追っ手は何発も堅い鉛の塊を撃ち続ける。
自分に目掛けて飛んでくる弾丸を走りながら回避する烏。
重量のあるスナイパーをバラしてリュックに詰め、それを所持しているせいか、なかなか追っ手を振り切ることができない……。
まるで終わりのない鬼ごっこをしているかの様に、烏は走り続ける。
……が、突如として烏は足を止めた。
逃走を続けている内に、烏は工事途中の高層高速道路に迷い込んでいた……。
目前の道は巨大な剣で切断された様に途切れている。
途切れた道の50メートル程下には現在使われている高速道路が通っており、深夜にも関わらず多数の車両が並ならぬスピードで滑走している。
彼が足を止めた理由は一つしかない……。
そう……道がないのだ。

(ふん、もらったな)
烏を追っていた追っ手の一人は、勝利を確信した様にほくそ笑んだ。
ここは高さ50余メートルはあるだろう高層地……それに加えて、自分達の追っている烏は目前に広がる途切れた道の前にいる。
もはや逃げ場所は存在しない筈だと追っ手は認識していた。
「もう、逃げられんぞ」
追っ手は烏に銃口を向けながら慎重に烏との距離を詰めていく。
……その時、月を覆っていた雲が消え夜の街を疾走していた彼等を照らしだした。


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