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クラスメイトはスナイパー
【コメディ その他小説】

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スナイパー〜二匹の小鳥〜-4

頭はいいのだが、いかんせん『我道同歩』だと思う。いわゆる『マイペース』
僕への質問という話題がズレかけているのを知ってか知らずか、長い卓上の机の上に座っていた可奈子がそこからひょいと身軽に飛び降り、溜め息混じりに桜子の歪んだ精神に喋りかけた。
「桜子ちゃん、話題ズレてるよ」
「おっと、それは違うぞ。僕は別に話題を脱線していた訳じゃない。いきなりド直球に自分の意思を伝えても許されるのは幼稚園生までと相場が決まっている。考えてもみろ、大人の世界でもそうだろう?まず美味い酒をたらふく味わせ、美味い肉をたらふく食わせ、そして最期に、若いねぇちゃんと戯れさせる、その後に仕事の話し……だろう?」
うん、うんと頷きながら誇らしげな表情で桜子は僕等に目をやった。
「長くて分かりにくい説明ありがとう」
呆れ返って疲れた表情で可奈子は机の上に座り直した。そして、話が逸れまくっているのを確認しつつ、アイコンタクトで僕に何かを伝えようとする可奈子。
さすがにこれを無視すると、本日3度目の昇天が僕を襲いそうなので必死に解読してみる。
恐らく可奈子は僕にこう伝えたいのだろう。
(近藤 桜子にツッコミを入れろ!)

「なんでやねんなっ!」
僕は勢いよく椅子から立ち上がると、一度軽く胸にあてた右手を45度の方向にいる桜子に綺麗にズビシっ、と向けた。
笑いの神よ舞い降りろ!
ビートき○しよ力を貸してくれ!
暫くの間両目をつぶり感慨に耽った後、辺りを見回してみた。
ぽかん、と口を開けたまま動かない桜子。


哀れみを込めた瞳を僕に向ける沖田、首を捻る山南、可奈子に至っては『ああ、やらかしてくれちゃったよこの馬鹿』といった感じで片手を顔にあててうなだれている。
あれっ、僕なんかマズった?

暫く時間が止まったかの様に僕を見ていた面々。
沈黙を破ったのは桜子の咳払いだった。

「ああ、その……なんだ斉藤。本来ツッコミというものはボケる側がいてこそ成立する。ボケる側が醸し出すアグレッシブかつ情熱的なボケをどう捌くか……それがツッコミにかせられた使命だと僕は思う。しかし今の君の謎めいた発言は、とてもじゃないがツッコミとは言い難い。つまり、君は……痛い人だ」
言い終わりにビシィっと丸めた教科書で桜子は僕を指した。
そして、一斉にうなづく一同。
「首領!私のジュースを盗んだのも、痛い三五先輩だと思います」
片手を上に挙げてぴょんぴょんと飛びはねながら沖田は宣言した。
またしても一斉に頷く一同。
『痛い』という理由だけで僕を犯人にするのはどうかと思う。

「ちょっ、ちょっと待ってよ。そんな根拠も証拠も推理すらない犯人の断定の仕方はおかしいよ」
じりじりと迫ってくる沖田と桜子から逃れるように後ずさりしながら、必死に弁明してみるが……
「ええぃ、痛い君の弁明など裁判では何の役にもたたん!さぁ、さっさとまひるのジュース、または幼子を僕に差し出せっ!」
無駄。
つぅか、よっぽど桜子のほうがヤバイと思う。
とっ、とりあえず。
「ロケッ○団は不滅だぁ」
またしても痛い発言と共に、飛び掛かってくる桜子とまひるの脇を擦り抜けて部室のドアを開けると一直線に続く長い廊下を全速力で駆け出す僕。


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